オーストラリアといえば、やっぱりコアラ。
「せっかくオーストラリアに行くなら、コアラに会いたい!」と思う方も多いのではないでしょうか。
ぬいぐるみのような見た目、もふもふの毛並み、のんびりした動き。
その圧倒的な可愛さで、世界中の人々を魅了し続けています。
でも実は、その愛くるしい姿の裏側には、想像以上にシビアな現実と、過酷な環境を生き抜くための驚くべき進化の物語が隠されているんです。
この記事では、コアラの生態をひも解きながら、コアラの意外な一面に迫っていきます。
読み終わるころには、コアラがただ「かわいい動物」ではなく、もっと愛おしい存在に感じられるはずです。
コアラの真実①:コアラは1種しか存在しない!
「コアラ科コアラ属」に分類される有袋類
コアラは「カンガルー目コアラ科コアラ属」に分類される有袋類。
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同じ有袋類であるカンガルーには、50種類以上もの仲間がいるのに対し、コアラは1種類しか存在しません。かつては、レインフォレストコアラ(コアラの祖先種)をはじめ8属16種がいたとされていますが、現在はすべて全滅してしまいました。それも2,000万年前とかすごい昔の話。
▽プチ豆知識:コアラが「クマ」と呼ばれることがあるのはなぜ?
コアラはクマの仲間ではありませんが、18世紀後半にオーストラリアにやってきたヨーロッパ人が、その見た目から「koala bear(コアラグマ)」と呼んだのが始まり。また、日本でも「コモリグマ(子守熊)」または「フクログマ(袋熊)」という別名で親しまれています。
コアラの真実②:南方系と北方系で見た目が違う!

コアラは生物学的には1種類(1属1種)ですが、オーストラリアの広大な大陸の中で、生息する地域の気候に合わせて独自の進化を遂げました。
大きく分けて、寒い地域に適応した「南方系」と、暑い地域に適応した「北方系」の2タイプが存在します。
【比較表】南方系コアラ vs 北方系コアラの違い
| 特徴 | 南方系 | 北方系 |
| 生息地 | ビクトリア州など | クイーンズランド州など |
| 体の大きさ | 大型(約9.5〜15kg) | 小柄(約4〜9kg) |
| 毛並み | 長くてフサフサ(高密度) | 短くてサラッとしている |
| 体色 | 濃い茶褐色・赤褐色 | 明るいグレー(灰色) |
| 適応環境 | 寒冷地(耐寒性が高い) | 熱帯・亜熱帯(耐暑性が高い) |
寒さに強い「南方系コアラ」

オーストラリア南部、南極に近い比較的冷え込む地域に生息するのが南方系コアラです。
体格の秘密: 北方系に比べ約1.5〜2倍の重さがあります。これは『ベルクマンの規則』と呼ばれる生物学の原則に従ったもので、寒冷な地域に住む動物ほど体が大きくなる傾向があるためです。体が大きいほど体温を保ちやすく、寒さに強くなります。
防寒仕様の毛: 密度が高く厚い毛は、冷たい風から身を守るダウンジャケットのような役割を果たします。
暑さに適応した「北方系コアラ」

一方、オーストラリア北部の熱帯・亜熱帯地域、比較的暑い気候に適応したのが北方系コアラです。
スマートな体つき: 体はやや小柄で、毛も短め。体色は薄いグレーで、全体的にスッとした印象です。体毛は短くサラッとした質感で、毛の密度も南方系に比べて低く、暑い気候に適応した体つきです。
日本の動物園での飼育: 実は、日本の動物園で見られるコアラのほとんどはこの「北方系」です。環境適応力が高く、輸送や飼育に適しているため、海外で最もポピュラーなタイプとなっています。

コアラの真実②:コアラは1日20時間寝る
睡眠時間が長いのは、ユーカリを主食としているから。
コアラは1日に20時間寝る。実はこれ、コアラの食生活が深く関係しています。
皆さんもご存じ、コアラは基本的に「ユーカリの葉」だけを食べて生きています。ただ、実際主食として食べるには、ユーカリの葉ってけっこう致命的な問題があるんです。

▽ユーカリの葉の特徴
・「油分」や渋み成分の「タンニン」を含む
・消化に悪い
・栄養価が低い
・毒性がある
これほど条件が悪い食べ物なので、ほとんどの草食動物は見向きもしません。(ユーカリの葉は、人間が食べても死にませんが大量に食べるとお腹を下すようです。)
でも、コアラにとってはこれが好都合だった。「誰も食べないなら独占できるじゃん!!」ってことでユーカリの葉を主食とする道を選んだのです。

そして進化したのが盲腸!!コアラの盲腸の長さは驚異の2mで、体長に対する盲腸の長さは約13倍で“哺乳類最長”と言われています。(人間の盲腸は5〜6cmほど。)
盲腸には、食べ物を体内に吸収しやすい物質に変える「細菌」が何十億と存在します。コアラは、この長い盲腸でユーカリの葉を発酵させて毒を分解し、少しずつ消化していくのです。
エネルギー効率が悪すぎる宿命
ただ、消化は数日〜1週間ほどかかる大仕事。しかも、コアラは摂取した食べ物のわずか25%しか体内に吸収できません。
つまり、摂取できるエネルギーが少ないぶん、消費エネルギーを極力抑えて消化に回す必要があるんです。だからコアラは毎日、約18〜20時間の睡眠時間をとり、起きている間もなるべくエネルギーを使わないように休んでいるというワケ!

コアラを画像検索すると、スヤスヤ寝てる姿ばかり出てくるのはこれが理由です。
こんな驚きの能力を発揮しているコアラですが、これは先祖が食物獲得競争に負けてしまった結果でもあると言えます。おっとりしたコアラが生き延びるには、こういう手段を取るしかなかったんじゃないかなぁ…。

でもそのおかげで、今もなお地球にコアラがいて、私たちに癒しを与えてくれているのは嬉しいことですけどね。
コアラの真実③:脳が小さいコアラの生存戦略
なぜコアラの脳は小さいのか?
前章でも触れた通り、コアラの主食であるユーカリの葉は、栄養(特に摂取できるエネルギー量)が多い食べ物ではありません。さらに、消化に時間がかかるうえ毒性成分も含むため、コアラは「限られたエネルギーで暮らす」ことを前提にした暮らしを送っています。
このような食性のもとでは、体の中でも多くのエネルギーを消費する器官を大きく維持することが難しくなります。とくに脳は、哺乳類の中でも維持コストが高い器官のひとつ。
そのためコアラは、進化の過程で体の大きさに対して脳が小さいという特徴を持つようになったと考えられています。これは「栄養が頭まで届かないから」という単純な話ではなく、低エネルギー食に適応する中で、エネルギー配分を抑える方向に制約がかかった結果と捉えるほうが自然でしょう。
脳が小さいコアラの“意外な強み”
コアラは樹上で暮らす動物ですが、ときに木から落ちてしまうこともあります。そこで注目されるのが、コアラの頭部の構造です。
一般的に哺乳類の脳は、頭蓋骨の内側にぴったりと収まっています。しかしコアラの場合、脳が比較的小さいため、脳と頭蓋骨の間にある程度の余裕があるとされています。
この隙間は液体で満たされており、衝撃を受けた際にクッションのような役割を果たす可能性があります。そのため、転落時に脳へ直接的なダメージが伝わりにくいと考えられており、脳が小さいことはコアラにとって意外な“強み”のひとつと言えるでしょう。

コアラの真実④:水を飲まない?名前の由来と水分補給の仕組み
コアラは水をほとんど飲まないことでも有名です。
それを示すように、名前の由来はオーストラリアの先住民アボリジニ「ダルーグ族」の言葉で、“水を飲まない”という意味の「コアラ」から来ています。
すべての水分をユーカリの葉から摂取するため、通常は水を飲む必要がありません。ただし、干ばつでユーカリの葉に十分な水分が含まれていない場合など、必要なときは水を飲むこともあるそうです。
コアラの真実⑤:母から子へ贈る「パップ」とは?愛情深い子育て
お腹のポケットで育つ赤ちゃん
コアラの妊娠期間は約35日!カンガルーの生態でもお話ししましたが、有袋類は未熟な赤ちゃんを出産し、お腹のポケット(育児嚢)で育てます。

コアラも同様。産まれたばかりの赤ちゃんは「ジョーイ」と呼ばれ、体長はわずか2cmほど、体重1g以下という超未熟な状態です。(ジョーイは、有袋類の未熟な赤ちゃん全般を指す言葉で、コアラだけでなくカンガルーやウォンバットなどにも使います。)
生まれたてのジョーイは目は見えず、毛もなく、耳も未発達。本当に小さくて弱々しい存在です。
それでも驚きなのが、すでに発達している臭覚と触覚、力強い前足と爪を使い、生まれつき備わった方向感覚を頼り、自力で母コアラのお腹にあるポケットに向かうんです。

そこから6ヶ月間は、赤ちゃんコアラはあたたかい母コアラの袋の中でお乳だけ飲んで生活します。この間は、動物園の飼育員でさえ袋を開けることはせず、外から様子を見守るだけ。母と子だけの大切な時間です。

離乳食は母親のウンチ!?
6ヶ月ごろから、赤ちゃんコアラは“パップ”と呼ばれる特製の離乳食を食べはじめます。
その正体は、なんと母親のウンチ…!これは、ユーカリが半分だけ消化されて出てきたもので、通常の大人コアラのフンとは異なります。

ユーカリを消化するために必要なバクテリアが含まれていて、赤ちゃんはそれを食べることで「ユーカリを消化できる体」になっていくんだって!面白いですよね。
おんぶをして子育て

赤ちゃんコアラが袋に入りきらないサイズに成長すると、今度は母親の背中にしがみついて生活しはじめます。ただでさえエネルギー摂取が難しい体なのに、母コアラは背負い続けなきゃいけないから大変…。本当にタフで愛情深い動物だと思います。

コアラの真実⑥:現在は絶滅危惧種。深刻な生息数の減少と保護の現状
コアラは現在、オーストラリア国内版レッドリストで「絶滅危惧種(EN)」に認定されています。これは「近い将来に野生種の絶滅が生じる危険性が極めて高い」というけっこう深刻な状態。
IUCNレッドリストの概要については、以下の記事で紹介しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
コアラは何十年も前から、毛皮目的の狩猟や外来種に襲われる問題、森林開発によって影響を受けていたとされますが、状況が深刻化したのが1990年代以降です。
この頃から地球温暖化による異常気象が、オーストラリアを襲うようになったのです。
そして2019年9月、決定打となったのがオーストラリア全土で発生した大規模な森林火災。
約23万㎢(2,300万ヘクタール)もの森林や原野が焼失し、犠牲になったと推定されるコアラの数は、数万頭とされています。救助されたコアラも、運よく生き残ったコアラも、もともと暮らしていた森を失ってしまったことで、さらなる減少や将来的な絶滅の危険が懸念されている状態です。
現在のコアラの推定個体数には諸説あり、3万〜5万頭という推定もあれば、10万〜50万頭という多い推定も。正確な実態は把握できていません。
いずれにせよ、異常気象は自然界を生きる動物たちに大きな影響を与える問題なのです。
コアラは生き抜く天才
今回はコアラの生態をご紹介しました!かわいいだけじゃない、むしろコアラは”生き抜く天才”。
過酷なオーストラリア大陸で進化を遂げ、今もユーカリの木の上で眠る小さな動物です。

次にコアラを見るとき、その姿に込められた生存戦略と、母親から子へと受け継がれる愛情を思い出してみてください。きっと、いつもとは違う気持ちで眺められるはず。
そして私たち人間は、彼らが未来も生き続けられるよう、できることを考えていきたいですね!
ポッドキャストでもこのテーマについて語っています!ぜひこちらもどうぞ。
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