ハトシェプストは「ファラオ=男性」が当たり前だった時代に、堂々と「女性ファラオ」として君臨した、超パワフルな美しき女王。今回お届けするハトシェプスト女王葬祭殿は、彼女がアメン神と父であるトトメス1 世、そして自分のために捧げた神殿です。この記事では、基本情報から見どころまでたっぷりご紹介します!
ハトシェプスト女王はどんな人物?
王妃から“女性ファラオ”へ
新王国時代の王妃、そしてファラオとして知られるハトシェプストは、トトメス1世の娘であり、異母兄弟の弟であるトトメス2世の妻、そして義理の息子トトメス3世の摂政(君主が幼少や病弱などで政務を担えないとき、その補佐を務める役職)でした。
彼女はトトメス2世の死後、まだ幼いトトメス3世に代わって政務を担い、その後ファラオとして約22年間エジプトを統治。女性でありながら「王」を名乗り、公的な場では付け髭をつけて男装をしていたと言われています。実際に、今回訪れた葬祭神殿では男装姿のレリーフを目にすることができます!

平和と繁栄の治世
ハトシェプスト女王の治世は、戦争よりも交易を重視。この方針がエジプトに平和と繁栄をもたらしました。
特に有名なのが、現在のソマリア周辺にあったとされる「プント国」への遠征派遣です。金、乳香、象牙、黒檀といった貴重な品々がエジプトに持ち込まれ、国は大いに潤いました。この遠征の様子は、葬祭神殿のレリーフにも詳細に描かれています◎
また、ハトシェプストは建設事業にも情熱を注ぎ、国内には多くの建造物が建てられました。まさにエジプトの黄金時代を築いた人物なんです!
実は個人的に、こんなハトシェプスト女王が大好き。「顔が綺麗…顔が好き…」ってずっと言ってきたけど、これって造形的な美しさだけじゃないんですよね。きっと、彼女の強さや知性といった内面から滲み出る美しさなんだと思います。
記録から消された女王
そんな偉大な功績を残した女王でしたが、彼女の死後、衝撃的な出来事が起こります。なんと、彼女の像や壁画に刻まれた名前の多くが、義理の息子トトメス3世の命によって破壊されてしまったのです…。
ハトシェプスト葬祭殿でも、壁画や銘文の一部が削り取られた痕跡が残っています。
ただし、2人の関係は良好だったと考えられているため、研究者の多くは「個人的な憎しみではなく、政治的判断だった」と見ているそう。おそらく、女性がファラオになったという前例が、将来の王位継承に混乱をもたらすことを恐れたのでしょう。権力を守るための苦渋の決断だったのかもしれませんね…。
ハトシェプスト女王葬祭殿の基本情報
3層テラスが特徴的な建築物

ハトシェプスト女王葬祭殿が建つのは「デイル・エル=バハリ」と呼ばれる聖地です。王家の谷から東へすぐの場所で、切り立った断崖の麓に位置しています。この神殿の大きな特徴は、3層のテラスで構成されていること。各階には列柱廊が並び、中央の広いスロープがそれらを繋いでいます。

背後にそびえる石灰岩の断崖と調和した設計で、まるで神殿が岩山から自然に生まれてきたかのようにも見えます!
営業時間と入場料金
2025年10月時点の営業時間と入場料金は以下の通りです。
営業時間:午前6:00〜午後5:00(年中無休)
入場料金:大人440エジプトポンド、学生220エジプトポンド
実際に訪れる際は、以下のエジプト観光・考古省のWebサイトから最新情報をご確認ください↓
https://egymonuments.gov.eg/en/monuments/hatshepsut-temple/
実際に訪れてみて
ハトシェプスト女王葬祭殿は、ファラオたちが眠る「王家の谷」から車でわずか10分ほど。

駐車場とチケット売り場は近く、王家の谷と同じようにお土産売り場を抜けてチケット売り場に向かいます。


チケット売り場から葬祭殿までも歩いて行ける距離で、あっという間に到着しました。
神殿の目の前に立ち、まず最初に感じたのが「想像以上に大きい」ということ!実はこの日の早朝、熱気球に乗って上空からこの神殿を眺めていたので、ある程度の規模感はつかんでいたつもりだったんです。

ところが実際に地上から見上げると、想像をはるかに超えるスケール!!

ド迫力の断崖絶壁を背景にドドんと建つ神殿は、圧倒的な存在感です。モダンなつくりと自然が融合した様子はまるで美術館のよう◎

神殿の内部へ(第1テラス→第2テラス)
第1テラスから第2テラスへ、スロープを登り内部へ入っていきます。
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スロープを登りきると目の前には広々としたテラス。その奥には柱廊があり、柱廊の南側にはプント国との交易の様子、北側には女王の誕生を描いたレリーフが残されていました。
そして、柱廊の左手には「ハトホル女神の聖域」、右手には「アヌビスの礼拝堂」が配置されています。この葬祭殿のある「デイル・エル=バハリ」はハトホル女神の聖域であることから、ハトホルのための礼拝堂があり、列柱には女神の顔が刻まれています!
最も神聖とされる第3テラスへ(第2テラス→第3テラス)
さらにスロープを登って、いよいよ第3テラスへ。
ここは葬祭殿で最も神聖なエリア。中央部にはアメン神を祀る至聖所が鎮座し、南側には王のための葬祭用礼拝堂、北側には太陽神を祀る礼拝堂が設けられています。

スロープを登った先に見えるのは、ハトシェプスト女王の顔をしたオシリス神像。アメンの至聖所を守るように配置されていました。前述の通り、彼女は公的な場では付け髭をつけ男装をしていたため、あご髭もしっかり表現されています。

神殿内には他にも、女王の顔を模した像やスフィンクスがあちこちに!

また、最上層である第3テラスからは、ルクソールの街を見ることができましたよ〜◎

壮麗な建築物で女性ファラオの痕跡を感じよう
今回はハトシェプスト葬祭殿を訪れた感想をお届けしました!
古代エジプト初の女性ファラオ、ハトシェプスト。彼女が建てたこの葬祭殿は壮麗でモダンなデザインもさることながら、ひとりの女性が男性優位の社会で最高権力を手にし、自らの存在を永遠に刻もうとした証です。ルクソール観光の際は、ぜひこの葬祭殿に足を運んで、数千年の時を超えて今に残る女性ファラオの痕跡を感じてみてはいかがでしょうか!
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