岩山の頂に佇む世界遺産「ダンブッラ石窟寺院」
ダンブッラ石窟寺院は、山や巨大な岩山をそのままくり抜いて作られたスリランカを代表する石窟寺院です。1991年にUNESCOの世界遺産にも登録されました。
寺院は高さ150メートルから200メートルほどある険しい岩山の頂付近に位置しているため、参拝するには青空へと続く長い階段を登っていく必要があります!

訪れたのはちょうど正午近く。容赦なく照りつける太陽のもと、しっかりと水分補給をして歩みを進めます。道中は幸いにも木陰が多く、時折野生の猿や犬が姿を現す賑やかな道のりです。

ようやく上りきると、そこには第一から第五まで、全部で5つの洞窟(石窟)からなる神秘的な聖域が広がります。
神聖な境内は靴の立ち入りが禁止されているため、靴を脱ぎ、裸足or白い靴下になって敷地内へと進む必要があります!

直射日光に熱せられた地面はなかなかの熱さなので、白い靴下を持参するのがおすすめです!
要所に敷かれたマットや日陰の涼しさに助けられながら、第一の洞窟へと順々に回りました。
壁やうねる岩肌の天井を隙間なく埋め尽くす
洞窟の一歩足を踏み入れると、そこには人間30人分はあろうかという巨大なブッダの寝仏(涅槃像)が横たわっていました。

圧倒的なスケール感に言葉を失います。
人間がちっぽけに見えるほど足も大きい!

さらに驚くのは、壁やうねる岩肌の天井を隙間なく埋め尽くす極彩色の仏画です。


1つの洞窟に50体以上もの仏像が並ぶ空間もあり、満ちているエネルギーに圧倒されます。
王の大復活劇!寺院の面白い歴史
このただならぬ迫力の背景には、とある王の「大復活劇」が隠されています。
実はこの洞窟、紀元前1世紀に南インドからの侵略者に追われたワラガンバー王が、14年間もの間隠れ住んでいた避難所だったのです。
その後、見事に王座を奪還した王が、「どん底の自分をかくまってくれた洞窟への恩返し」として、ここを壮麗な寺院へと改築したといいます。

さらに、この暗い洞窟に総面積2000平方メートル以上もの緻密な絵画をどうやって描いたのか、その技法には古代の驚くべき知恵が隠されています。

洞窟内で松明(たいまつ)を燃やすとススで壁が黒くなってしまうため、一説によると、白い布や金属製の鏡を使って外の太陽光を複雑に反射させ、奥深くまで光を届けて描いたのだそうです。
しかもその絵の具は、植物や鉱物、土から作られた100%天然の顔料。
スリランカの激しい雨や高い湿度にさらされながら2000年以上も美しさを保ち続けているのは、岩肌に雨水が侵入しないよう溝を掘った「雨落とし」という構造のおかげでもあります。

現代の境内でも、パレットを片手に剥がれた色彩を筆で丁寧に補う人や、欠けた部分に合う小さな石を慎重に貼り合わせる修復作業の様子が見られました。


何世代にもわたり、途方もない敬意と信仰心でこの美しさを守り続けてきたスリランカの人々の歴史そのものが、この石窟に息づいています。
ダンブッラ石窟寺院の階段は「333段」。その意味は?
洞窟での濃密な時間を終え、今度は一歩ずつ階段を降りて帰路につきます。上りは必死で見落としていましたが、帰りはのんびりと段数を数えながら歩いてみることにしました。

1、2、3……と一段ずつ刻み、ついに地上へ辿り着いたその瞬間、数字は綺麗に「333段」を指していました。
あまりにも見事なゾロ目に思わず笑顔になってしまいます。
公式に「333段に宗教的な意味がある」と明言されているわけではありませんが、仏教の価値観を紐解くと、これが偶然ではなく当時の作り手が狙って設計したものであることが見えてきます。
仏教において「3」は非常に神聖で重要な数字です。仏教の3大要素である「仏(お釈迦さま)」「法(その教え)」「僧(お坊さん)」を三つの宝として尊ぶ「三宝(さんぼう)」の思想がその根本にあります。
さらに古い仏教の世界観では、世界の中心にそびえる高い山の頂上には、33の神々が暮らす天界「三十三天(とうりてん)」が存在すると信じられてきました。
むき出しの巨大な岩山のてっぺんにある聖地をめざし、3が連なる「333段」を一段ずつ登っていくその過程が、「いま、一歩ずつ神々のいる天界へと近づいているのだ」という、当時の建築家から参拝者への粋なメッセージだったのではないでしょうか。
そんなロマンあふれる古代の演出に思いを馳せると、ダンブッラの岩山がいっそう愛おしく感じられるのでした。
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