今日はクーパーペディからセデュナまで約1,000kmを走る大移動の日。
そのハイライトは、ずっと憧れていた野生カンガルーとの出会いです!
ついに念願が叶った、記念すべき「カンガルーデー」。でも、出会ったのは元気に跳ねるカンガルーだけではありませんでした。
道路脇に横たわるカンガルーの無数の死骸。喜びと悲しみ、いろんな感情が入り混じった、忘れられない一日の出来事を振り返ります。
今日の出来事
誰もいない秘境へ。満天の星空から始まる1日
この日は、クーパーペディ郊外にある「カンク=ブレイカウェイズ保護公園」での星空観察から始まりました!
朝4時過ぎに洞窟ホテルを出発して、まだ暗い砂漠の一本道をヘッドライトだけを頼りに走ります。
途中からはオフロードになり、街灯はただの一本もない。真っ暗な荒野の中を慎重に進んで、ようやく撮影地に到着しました!宿を出てから30分くらいだったかな。
空いっぱいに広がる星
車から降りた瞬間、目に飛び込んできたのは空一面の星。
フロントガラス越しでも綺麗だったけど、人工物がひとつもない”ザ・秘境”で見上げる星景に、興奮が止まりません…!夜空を横切る流れ星にうっとりしながら、オリオン座が逆さまに昇っていく南半球ならではの景色をしばらく眺めました。
やたらと多い人工衛星
そんな秘境の地で、唯一人工的なものがあります。スターリンクの衛星です。
今まで見た中でも一番と言えるくらい衛星が多くて、どの方向を見てもすーっと光の線が走る…。実際は速いはずなのに、広い空の中ではゆっくり滑っていくように見えるのだから不思議です。

連なってゆっくり移動する様子は、まるで銀河鉄道のよう。実際にスターリンクを使っている身としては、「あの光から電波をもらっているのか…」と、感慨深い気持ちになりました。
夜明けとともに現れた「虹色の丘」
少し冷え込んできたので、ココアを入れてビスケットをかじりながら夜明けを待ちます。

星が少しずつ薄れて、地平線が赤く染まっていく…。空が明るくなってようやく自分たちがどんな場所にいたのかわかりました。

色彩豊かな丘が連なる場所。どうやら私たちは、そのうちの一つの丘の上にいたようです。暗闇の中では想像もつかなかった景色で、夜と朝で世界がまるごと入れ替わったみたいでした。

野生カンガルーと遭遇!レッドカンガルーの家族
朝日を見終えて、次の街へ向かってオフロードを走り出してからしばらく経った頃。
ついに念願の、野生カンガルーを発見しました!

カンガルーとの距離はおよそ30メートル。目の前というわけではないけれど、耳の形も体の輪郭も、肉眼でしっかり確認できました。

こちらをじっと見ながら、ぴょん、と軽く跳ねる。彼らから伝わってくる緊張感は、動物園で見るカンガルーとはまるで違います。少し離れた場所には仲間もいて、1頭は見張り役かな?警戒したように立っているのが印象的でした。

その後さらに別の群れにも遭遇。

こちらも見張り役が周囲を監視する中、残りのカンガルーはのんびり草をはんでいました。最後はみんなそろって、ぴょんぴょんとジャンプしながら草原の向こうへと消えていきました。
後で写真を見返して調べたところ、どちらの群れもレッドカンガルーでした。レッドカンガルーは数あるカンガルーの種の中で、もっとも大きく筋肉質な種類。ずっと会いたいと思っていた相手だっただけに、とっても嬉しかったです。
そして始まった、カンガルーの死体ロード
生きたカンガルーに会えた喜びから数分…。
車で走りながらふと道路脇に目をやると、カンガルーの死骸がありました。1頭だけじゃなく、また1頭、また1頭。ほぼ100〜50メートル間隔で、ずっと続きます。鳥が集まっている場所には、必ずカンガルーがいました。
生きて跳ね回るカンガルーを見た直後だっただけに、その落差は衝撃的でした。
運転しながら死骸を避け、またカンガルーの死骸を見て車内で悲鳴を上げる…この繰り返し。人生でこんなに死骸を避けながら運転することになるとは、思ってもいませんでした。

カンガルーについて調べてみたとこと、オーストラリアでは100kmの間で、週に21頭のカンガルーが亡くなっているようです。多いところでは3kmに1頭という情報も。
つまり、500kmなら週に100頭以上。東京〜大阪間に相当する距離で、毎週100頭を超えるカンガルーが交通事故に遭っているということなんです。
塩湖でお昼休憩。開放的な空間で心を休める

出発してから、3〜4時間が経った頃でしょうか。
近くに塩湖があるということで、お昼休憩を取るために立ち寄ることにしました。
▽塩湖の場所
塩湖の駐車場に到着!歩いて線路を超えると塩湖にたどり着きます。

この線路を越える(↓)

塩湖に到着!

この日のお昼ご飯はカップ焼きそば。やなぎーがUFOで、きじーが一平ちゃんです。
「絶景×カップ麺」が私たちの旅の定番ですが、カップ焼きそばは実は初めて。

乾燥地帯だからなのか、焼きそば特有のソースの香りがほとんど飛んでしまって、鼻を5センチくらいまで近づけてやっとソースの匂いがしました。でも口に入れたら、ソースの香ばしい味がしっかり広がった!
焼きそばうま〜〜〜!!

せっかくだから、パンに挟んで「焼きそぱパン」にもトライ!これもまた美味しかったです。

ここまでの数時間、カンガルーの死体を見続けて心が少し疲れていたから、広大な塩湖を前にしたこのひと時が、体だけじゃなくて心の休憩にもなりました。

起きたばかりのカンガルーの交通事故に遭遇
ところが、穏やかな気持ちは長くは続きませんでした。車に乗って再び出発しようとしたら、駐車場の出口に1頭のカンガルーが横たわっていたのです。
最初に目に入った時、その子はただ道路脇に横たわっているように見えた。
「もしかして、まだ生きているのかな……?」と心配になって、恐る恐る少しだけ触れてみました。
すると、驚くほど体が温かかった。
しかも毛がふわふわで、今まで触ったどんな動物より柔らかく感じました。たぶん猫よりもふわふわだったと思う。
だけどそれと同時に、もう亡くなってるっていうことも悟りました。

私たちがご飯を食べていたわずかな時間の間に、車に撥ねられたようでした。体が小さかったから、おそらく子どものカンガルーだったと思います。人間でいうと、中学生くらいの年頃の子だったのかもしれない。
今まではカンガルーに対して“面白い動物”という印象を持っていました。
オーストラリアでは数も多いし、動物園でも何度も見てきた。中には顔がおじさんっぽい子もいて、親しみやすくてコミカルな存在だと思っていたから。
でも起きたばかりの交通事故を目の当たりにし、その印象がガラリと変わった。
初めて触れたカンガルーの柔らかい毛並みにとても愛おしさを感じたんです。今まで出会ったことのあるカンガルー1体1体も、温かくて柔らかい毛をまとい、命が宿っている。そして家族もいる。
この日の早朝、私たちは元気に跳ね回るカンガルーの家族を見ていたからこそ、この子にもきっと家族がいたんだろうなと。みんなで移動している途中、この子だけ事故に遭ってしまったのかな。
お母さんは、自分の子どもが轢かれる瞬間を見てしまったのかな。
オーストラリアの壮大な自然の中で出会った、忘れられない現実でした。
なぜカンガルーは車を避けられないのか?3つの理由
オーストラリアを旅していると、よく耳にするのが 「なんでカンガルーって車に突っ込んでくるの?」という話。でも実は、カンガルーが車を攻撃しているわけでも、不注意なわけでもありません。
カンガルーには身体的・本能的な特徴があり、それによって“避けたくても避けられない”状況が起きてしまうんです。
実際、現地でもロードキルは深刻な問題になっていて、特に早朝や夕方は事故が非常に多いそう。
その理由は、大きく3つあります。
①高速移動中の急な方向転換が苦手
カンガルーは、後ろ脚と尻尾の筋肉が大きく発達していますが、これは前方へのジャンプ力を最大化するために特化したもの。そもそも左右を同時に動かすことしかできないため、移動はもっぱら足を揃えたジャンプです。そのため、迫ってくる車に対して機敏な方向転換をするのが難しいのです。
②ヘッドライトを見ると「固まってしまう」
カンガルーは、夜行性の動物に多い「freeze response(凍りつき反応)」という習性を持っています。そのため、車のヘッドライトのような強い光を見た瞬間、その場で動けなくなってしまうのです。
日本の身近な動物で言うと、鹿も同じような習性を持つことで知られています。
③車のスピード感を認識できない
カンガルーの脳は、人間や捕食者の動きには反応できますが、時速100kmで近づく物体のスピードを認識することができません。そのため、遠くに車が見えていても「まだ大丈夫」と判断して動き出し、タイミングが重なってしまうことがあるのです。
このような現状に対して、オーストラリア政府も標識の設置やフェンスの整備、夜明け・日没時の注意喚起など、さまざまな対策を講じています。それでも、道路網が広大すぎるオーストラリアにおいて、すべての「危険ゾーン」に対策を施すのはまだまだ難しいのが実態です。
1000kmの道のりをひたすら進み、セデュナへ

クーパーペディからセデュナまでは約1000km。前半はやなぎー、後半はきじー、と運転を交代しながらひたすら走り続けました。

蛾と西陽に苦労した日没
夕方の日没前後。建物もない、一見気持ちよさそうな一本道が続きますが、実際はかなり大変でした…!

まず大量の蛾が粉雪のように降ってくるんです。フロントガラスにコツンコツンと次々と当たって、真っ白になっていく…。この日に限らず、虫でフロントガラスが汚れることはよくあるのですが、ここは蛾の数が異様に多かった。

さらに西陽が強烈で、沈む直前の太陽が真正面にあって、サングラスをしていても対向車が見えないほど。すれ違うたびにヒヤヒヤしました。
幻想的なトラックのヘッドライト
夜になると、今度は街灯ゼロの漆黒の世界。そんな闇の中で印象的だったのが、遠くを走るトラックのヘッドライトが空へ向かって伸びていく光の柱でした。
テーマパークで見るサーチライトのような光の筋が、大地のど真ん中に浮かぶ光景は、なんとも幻想的。
さらに面白いのが坂道です。トラックが下り坂に入ると、ライトの角度が下がってその光の柱がふっと消える。これがまるで光が大地に吸い込まれたみたいで、不思議な感覚でした。
セデュナのおばあちゃん宿に到着
そんな道をひらすら進んで、夜8時過ぎにようやく今夜泊まるセデュナの宿に到着。
ホストのおばあちゃんがニコニコの笑顔で迎えてくれて、その優しさが1000km移動の疲れに沁みました。

部屋はおばあちゃんのセンスが光るおしゃれな内装で、ほっこりと落ち着く雰囲気。

特に印象的だったのが麦わら帽子です!収拾しているのか、たくさんの種類がありました。

荷物を部屋に運んだ後は、仕事の打ち合わせを済ませて夜ごはんの支度。

食材があまり残っておらず、ありもので作ったトマトパスタでしたが、これがまた美味しかった。
調味料もいつもと違うけど、その特徴を活かして試行錯誤しながら作る過程が、やっぱり好きだなと改めて感じました。

カンガルーのことを考え続けた1日だった
この日は、一日中カンガルーのことを考えていました。朝イチに遭遇した生きたカンガルーへの喜び。死体ロードで感じ続けた切なさ。駐車場で触れた子カンガルーの温もりと、その愛おしさ。
そして、私たちが今日移動してきた1000kmという距離の中で、週に200頭が命を落としているという事実。
数字で見ると「多い」で終わってしまうけど、実際に体感してみると、それが現実として重さを持って迫ってきました。
オーストラリアの大地を走るなら、ぜひ知っておいてほしいことがあります。夜明けと日没の時間帯は特に注意して、スピードを落として走ること。それだけで、救える命があるかもしれません。
▽この日の出来事を話しているポッドキャストはこちら
旅の情報など、ご質問のある方は[お便りフォーム]よりご連絡ください!