ホッキョクグマの生態に迫る!毛の秘密やハンターとしての凶暴さ

ホッキョクグマの生態に迫る!毛の秘密やハンターとしての凶暴さ

北極で生きるホッキョクグマの生態を2回に分けてご紹介!今回は体の特徴を中心にお届けします。ホッキョクグマには、過酷な環境を生き抜くための特殊能力がたくさん。

ホッキョクグマの体重、生息場所は?

種属哺乳網 食肉目 クマ科 クマ属
体長1.8〜2.8m
体重400〜680kg
生息地北極海・カナダ北部・ロシア北部
推定個体数26,000頭(絶滅危惧種Ⅱ類)

白い見た目から「シロクマ」の呼び名でも知られるホッキョクグマ。陸上最大の肉食動物です。冬は-50度にもなる北極海の周辺に生息しています。

プチ豆知識

日本ではホッキョクグマと呼びますが、英語名では北極という言葉は含まず、単に「Polar Bear(極の熊)」と呼ばれます。なぜなら、南極にはシロクマがいないから!もし南極にもシロクマが生息していたら、北と南を区別するために違う名前がつけられていたかもしれません!

ホッキョクグマの推定個体数は26,000頭(うち、約60%がカナダに生息)で、絶滅危惧種Ⅱ類(VU)*に指定されています。かつては狩猟などによって個体数が激減しましたが、保護活動によって今の数まで戻ってきました。

*:絶滅危惧種Ⅱ類は、絶滅の危機が増大している種を指します。過去のポッドキャストで、絶滅危惧種のデータをまとめている「IUCN」の話をしているので、興味のある方は聞いてみてください!

どうして氷の上でも滑らないの?

ホッキョクグマは最大で体長3m・体重700kgにもなる大きな体なのに、どうしてツルツルの氷の上でも滑らないのでしょうか?

その秘密は、ホッキョクグマが持つ3つの身体的特徴にあります。
 ・大きな体を支える、太く大きな足
 ・滑り止めの役割をする肉球
 ・氷に刺さる鋭い爪

理由1)大きな体を支える、太く大きな足

写真からも分かる通り、ホッキョクグマは太い足をしています。足裏の大きさはなんと30cm!!

足裏はダイバーがつける足ヒレのような形状をしています。この足の形は泳ぐのに適しているだけでなく、体重を分散させます。体重を4つの手足に均等に分散することで、雪や氷にめり込むことなく動くことができるのです!雪山で使うカンジキのような役割を果たしています。

でも、たとえ雪や氷にめり込むことがなかったとしても、ツルツルしている氷の上を歩くのは容易ではありません。そこで活躍するのが肉球です!

理由2)滑り止めの役割をする肉球

ホッキョクグマの肉球には、滑り止めの役割をする小さな突起がついています。
ある研究によると、これらの小さな突起が発達していることで、他の熊と比べて摩擦力が最大50%も増加しているとされています。

理由3)氷に刺さる鋭い爪

鋭い爪をもつホッキョクグマ。この爪が、氷に引っかかりチェーンスパイクのような役割を果たします。そのため、ツルツルの氷の上でも滑ることなく、歩いたり走ったりすることができるのです!実際、ホッキョクグマは氷の上でも時速40kmで走ることができるのだそう。すごい…。

また、この爪は狩りをするときも役立ちます。獲物に向かって手を振りかざし、鋭い爪で致命傷を与えます。

極寒でも生きられる体の秘密

ホッキョクグマはなぜ-50度の極寒世界で生きられるのでしょうか?

理由1)毛の重ね着をしているから

ホッキョクグマの毛皮の分厚さはクマ界No.1!二重構造の重ね着スタイルをしています。

内側にはとても細かい綿毛が密集し、外側には長く硬い毛が生えている。さらに、皮膚の下には厚さ10cmの脂肪層があり、体の内側をポカポカに保っているのです。

同じく極寒地域に住むカリブー(トナカイ)も毛皮の重ね着をしています!カリブーについては、以下の記事で生態を説明しているのでよかったらご覧ください。
なぜサンタの相棒はトナカイなのか?トナカイになりきってサンタへ自己プレゼン!

理由2)黒い地肌で熱を吸収するから

ここで突然ですが質問です!ホッキョクグマの毛は何色をしているでしょう?

「白色でしょ?」と思った方、残念ハズレです!

ホッキョクグマの毛は、私たちの目には白色に見えているだけで実は「透明」なのです。
さらに驚きなのが、毛をかき分けて見える地肌は黒に近い色味をしています。

黒色のホッキョクグマはこちらのYoutubeをご確認ください。
https://youtu.be/gsvx8uLARfk?si=F7VrWWO4-bb61Hzb

黒色は太陽光を吸収しやすいという自然界の法則がありますが、ホッキョクグマは毛が透明なため、太陽光が黒い地肌まで直接届きます。その結果、熱を効率よく吸収し、体温を保つことができるのです。

理由3)断熱性に優れた毛の持ち主だから

さらにさらに驚きなのが、ホッキョクグマの透明の毛は中空構造になっています!
つまり、毛の1本1本がストローのような形状をしているのです。このおかげで、ホッキョクグマは断熱効果を高めることができます。

この構造を身近なもので例えると、北海道などの寒冷地でよく見られる窓の二重構造に似ています。これは、空気の層を挟むことで断熱効果を高める原理です。

つまり、ホッキョクグマは1本1本の毛が二重窓のような働きをして断熱効果を高めているのです。すごい!!!
また、毛が白色に見えるのは、毛の中の空洞に当たった太陽光が乱反射するためです。

ホッキョクグマは獰猛な肉食ハンター

ヒグマなど、私たちの身近にいるクマは雑食ですが、ホッキョクグマは立派な肉食動物。

特にワモンアザラシの赤ちゃんは彼らの大好物です!なぜなら、ワモンアザラシの赤ちゃんは体脂肪分が多く、極寒地域で生きていくホッキョクグマにとっては大事な栄養源!

ここからはホッキョクグマのハンターとしての一面を見ていきましょう。

優れた嗅覚をもつ

ホッキョクグマの主食であるワモンアザラシは雪の下に巣を作り、水の中も自由に行き来をします。水の中では45分ほど留まることができます。息継ぎするタイミングで空気穴から顔を出すアザラシ。この瞬間がホッキョクグマにとって狙い目です。

しかし、基本的に雪の下にいるワモンアザラシを、ホッキョクグマはどうやって見つけているのでしょうか。
実はホッキョクグマは嗅覚が非常に発達しており、1.5km先かつ1mの積雪の下でもアザラシの匂いを嗅ぎ分けることができるのです!

アザラシの息の匂いを追跡して近づき、巣の上で狩りのタイミングをじっと待ちます。

これ!!めちゃめちゃ怖くないですか…?

時には平気で巣を壊したりします。直立して頭からどすん!!勢い余ってでんぐり返し状態になってしまうことも。

これは、まさに血塗られたハンター!!しかし、こんなに暴れても狩に成功するのは20回に1回ほど。

ホッキョクグマは、アザラシ以外にもカリブーを食べたり、4mにもなるシロイルカを倒して食べたりすることもあるそうです。

泳ぎが得意で持久力に優れている

実はホッキョクグマは泳ぎも得意です。ホッキョクグマは巨体ながら頭部は小さい。まさにロケットのようなフォルム!この体型のおかげで、水の抵抗をほとんど受けません。

水しぶきなくをほとんど立てることなく入水し、大きな手と体の形を生かして効率よく水の中を進むことができるのです。

実際、時速10kmで100km近くも泳ぎ続けられるのだそう!最新の研究によると、1頭のメスのホッキョクグマが、これまで知られていた中では最長となる連続9日間、687kmの海中移動を行ったことが明らかになりました。

また、ホッキョクグマの行動圏はとても広く1年に1,120 kmくらい移動するそうです。

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ホッキョクグマの生態の前半はここまで。ポッドキャストでも楽しく語っているので、よかったら聞いてみてください。

次回は驚きのホッキョクグマの出産についてお届けします!

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追記)ホッキョクグマの生態の後半記事は以下。
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