ホッキョクグマの生態の後半記事です!今回は驚きの出産エピソードをお届けします。
前半の記事はこちらからご覧ください。
ホッキョクグマの生態に迫る!毛の秘密やハンターとしての凶暴さ
ホッキョクグマの一生は飽食と絶食の繰り返し
ホッキョクグマは1年中、氷の上で生活するのではなく、氷が解けてしまう夏の間は北極海沿岸部の陸地で生活します。
しかし、陸地の狩りは苦手で食べられるものがほとんどありません。そのため、再び海が凍り始めるまでの間は食料難に苦しみます。3〜4ヶ月の間は絶食状態が続くのだそう…信じられない…!!
海が再び凍り始めるのは11月ごろ。その時期になると、最も早く海が凍るハドソン湾南西部にホッキョクグマがこぞって大集結します。彼らは海の方を眺めながら、氷が覆われるのをじっと待つのです。
プチ情報
近年の温暖化の影響で、海が凍るタイミングが不安定になっています。また、春の雪解けも早まっているため、ホッキョクグマにとってはなかなか厳しい状況…。主食であるワモンアザラシの繁殖時期が4月〜7月末(春)のため、これ以上氷が溶けはじめるのが早くなるとまずい!!
このようにホッキョクグマの食生活は、飽食と絶食の繰り返し。
厳しい夏を乗り切るためにも、冬と春には狩りをして脂肪を蓄える必要があります。
ホッキョクグマの腸は脂肪分の摂取に適していて、体重の半分は脂肪であると言われています。脂肪分は肉より消化しやすく、カロリーの高い栄養源。食べ物が乏しくなると、代謝速度を下げることできる点でも◎
そのため、ホッキョクグマは動物を狩っても脂肪の部分しか食べないそうですよ!残りの部位は、ホッキョクギツネなどが攫っていくようです。
命懸けの出産!8ヶ月の絶食
ホッキョクグマの母グマが子育てにかける時間は約2年半。子育てをしている間は新たに妊娠することがないため、一度子どもを産んだら次に妊娠するまで3年ほどかかります。
そのため、哺乳類の中では生涯の産子数は比較的少ないとされています。
ここからは、ホッキョクグマの出産について見ていきましょう。まずは、以下の簡単な表をご覧ください。
時には8ヶ月も食べることができない命懸けの出産。
その期間を乗り越えるために、200kg近くも体重を増やさないといけません。ホッキョクグマのメスの体重は通常時で150kg〜250kgなのでその約2倍。獲物が少ない夏の時期でもあるのでめちゃめちゃ大変です。
秋になると、出産準備のために単独で巣穴に移動します。ハドソン湾から歩いて2〜3日ほどのところに先祖代々伝わるかまくらがあり、そこで出産準備を行います。
初冬に1〜4頭(2頭の場合がほとんど!)の子グマを出産。
生まれたての子グマは1匹あたり400gほどで非常に小さく、目も開かず歩行もできません。過酷な環境を生きていくにはあまりにも小さすぎるので、子グマが1匹あたり10kgを超えるまでは巣穴から出ることはありません。
母グマは、冬の間もずっと食事も排尿もせず、体温を高く保ちながらひたすら子グマに母乳を与え続けます。そのため、巣穴から出てくる頃には体重が25〜50%減少するそうです。夏に体重を増やしておかないと乗り切れない、ほんと命懸けの出産です。
順調にいけば、3月〜4月ごろに巣穴から出ることができます。最初に母グマが出てきて、暖かい日を確認してから子グマを出します。
母グマはお腹が減ってるはずなのに、巣から出てもすぐに狩りに出かけることはありません。ハドソン湾までは子連れだと1週間はかかりますが、母グマは子グマの安全を最優先に考えるのです。
母グマがハドソン湾まで問題なくいけると判断したら出発。新たな旅の始まりです。
プチ豆知識
子グマは、戦いごっこをして筋肉を鍛えます。後ろ足で立ってパンチをしたり押し合ったり。この戦いごっこは、子グマのレスリングなどと呼ばれています。
北極の環境に最適化されたホッキョクグマ
ホッキョクグマの生態を2回に分けてお届けしました!毛が白色ではなく透明だったり、ストローのような構造をしていたり、母グマは8ヶ月も絶食に耐えることができたり…ホッキョクグマの生態は驚きの連続だったのではないでしょうか?
温暖化の影響で住処がなくなりつつあるホッキョクグマ。保護活動によって絶滅の危機からは一時的に脱出したものの、これからも厳しい状況は続きます。
ホッキョクグマが絶滅しないよう、私たちにできることがあれば少しずつでもしていきたいところですね。
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ポッドキャストでもホッキョクグマの生態について楽しく語っているので、よかったら聞いてみてください。