大型ネコ科動物の生態と見分け方〜ライオン・チーター・ヒョウ・ジャガー・トラ〜

大型ネコ科動物の生態と見分け方〜ライオン・チーター・ヒョウ・ジャガー・トラ〜

アフリカのサファリに行くならやっぱり大型のネコ科動物が見たい!!大型ネコ科動物といえばライオン、チーター、ヒョウなどが挙げられますが、それぞれの見分け方や習性の違いをご存知ですか?
…ということで、今回は大型ネコ科動物を代表して、ライオン、チーター、ヒョウ、ジャガー、トラの生態をお届けします。

百獣の王・ライオン! ネコ科で唯一社会性を持つ

最初にご紹介するのは、百獣の王として有名なライオン!!まずは基本データを見ていきましょう。

種属哺乳網食肉目 ネコ科 ヒョウ属
体長オス170-250cm / メス160-190cm
体重オス150-240kg / メス122-182kg
生息地サハラ以南のアフリカ、インド北部
スピード時速80km
種属哺乳網食肉目 ネコ科 ヒョウ属
体長オス170-250cm / メス160-190cm
体重オス150-240kg / メス122-182kg
生息地サハラ以南のアフリカ、インド北部
スピード時速80km

ライオンは、ネコ科の中でトラに次いで大きな体をしています!特に筋肉がゴツゴツと発達しており、体重における筋肉の重さ、いわゆる骨格筋率が58.8%もあると言われています。
人間では、骨格筋率が37.4%を超えると筋肉量が高いと言われ、数値化できる最大値は60.0%。つまり、ライオンの骨格筋率“58.8%”は人間の最高レベルなんです。

写真からも、筋肉が発達しているのが分かりますね◎


ここからは、ライオンの生態における特徴的な3つのポイントを詳しく説明します!

特徴①:ライオンは“オス”と“メス”で見た目が異なる

ライオンはネコ科の中では珍しく、オスとメスの見た目が異なります!オスには、ふさふさのタテガミがありますがメスにはありません。また、オスの方がメスよりも1.3倍ほど大きな体をしています。

ライオンの夫婦

メスの見た目は他のネコ科の動物に近く、特にピューマとよく似ています。
※ピューマは「極寒のネコ科動物!ボブキャット・ピューマ・カナダオオヤマネコの生態を学ぶ」で紹介しています。よかったらご覧ください。

特徴②:地面から轟くような、ライオンの鳴き声

ライオンの鳴き声といえば「ガオーー!!」と遠吠えをしているイメージがありますが、実際は「ガウ!ガウ!ガウ!」と短く吠えています。その声は低く、地面から轟くような迫力!圧倒的な王者感を感じます◎

鳴き声の動画はこちら

特徴③:ネコ科の中では珍しい!社会性の持ち主

ライオンは、社会性が非常に高く「群れ」で行動をします。単独で行動することの多いネコ科の中では珍しい存在です。

ライオンの群れは「プライド」と呼ばれ、1〜数頭のオスと10頭前後のメスや子どもで構成されています。オスはプライドを守る役割を、メスは子育てと狩りをする役割を担うのだそう。

「プライド」と呼ばれるライオンの群れ

プライドに所属しているメスたちは、姉妹や母子などの血縁関係にあり、特に強い絆で結ばれています。その絆の強さは、一生涯を同じプライドで過ごし共同で子育てを行うほど!まさに「One for all,all for one」の関係です。
一方のオスは、メスとの血縁関係がありません。メスたちはリーダーのオスライオンを評価し、時にはプライドから追い出すこともあるのだとか…。ライオンのオスは、王や権力のシンボルとして様々な場面で使われているイメージがありますが、なかなか苦労しているんですね…!

ちなみに、獲物が多い地域のライオンほど、写真のように寝そべって待機している傾向があります。

世界最速の哺乳類・チーター! 臆病な性格の平和主義者

続いては、俊足の持ち主チーター!この記事で紹介している大型ネコ科動物の中で、唯一、種属が異なります。他の4種は全てヒョウ属ですが、チーターのみチーター属に分類されます。

種属哺乳網食肉目 ネコ科 チーター属
体長110-140cm
体重40-65kg
生息地サハラ以南のアフリカ、中近東、南アジア
スピード時速80km-130km
種属哺乳網食肉目 ネコ科 チーター属
体長110-140cm
体重40-65kg
生息地サハラ以南のアフリカ、中近東、南アジア
スピード時速80km-130km

チーターは頭が小さいうえに手足が長く、ほっそりとした、しなやかな体つき。まるでモデルのような体型です!目頭から口に沿って付いている黒い涙模様はチーターを見分けるのに最も分かりやすい目印ではないでしょうか?この黒い涙模様は、昼間の眩しい光から目を守る効果があります。

子どものチーター

また、子どものころには(首から背中にかけて)タテガミが生えているのもチーターの特徴です。捕食者から身を守るためとされており、成体になるにつれ薄くなっていきます。

黒い涙模様やタテガミなど、チーター独自の身体的特徴があって興味深いです◎
ここからは、チーターの生態における特徴的な3つのポイントを詳しく説明します!

特徴①:チーターは世界最速の哺乳類

チーターは足が速いことで有名ですが、その速さはわずか3秒で時速100kmに到達するほど。世界最速の哺乳類です!!

チーターが速く走れる理由は、“足の爪”にあります!他のネコ科の動物は、走るときに爪を引っ込めますが、チーターは爪を引っ込めることが出来ません。しかし、その引っ込められない爪がスパイクの役割となり、結果、速く走ることができるのです!

特徴②:まるで子犬!?チーターの可愛い鳴き声

チーターは、ライオンのように轟くように吠えることはなく「ワン!ワン!」と可愛らしい声で鳴きます。実は人間にもよく懐くため、海外ではチーターをペットとして飼う人もいるようですよ!

鳴き声の動画はこちら

特徴③:意外と弱い?臆病な性格の平和主義者

肉食動物で足が速ければ無敵ではないか!?と思ってしまいますが、実際のところ、そうではありません。チーターは疲れやすく、走るのも500mが限界です。そのため、そっと獲物に近づき短距離で仕留めなければいけませんが、失敗に終わることの方が多いです。

また、チーターは“顎の力が弱い”という、サバンナを生き抜くうえで大きな弱点があります…。
顎の力が弱いため食事に時間がかかってしまい、食事中に他の動物に獲物を横取りされてしまうこともしばしば。獲物を横取りされても、チーターは争うことはせずそそくさと逃げていきます。
このような理由から、意外にも臆病で慎重な性格と言われています。言い換えれば、無駄な争いは避ける平和主義者なのかもしれません。

チーターのオスの群れ

ちなみに、足の速さはオスよりもメスの方が速く、足の速いメスは単独で狩りを行います。
一方のオスは、複数のチーターで狩りをする傾向があります。

樹上の狩人・ヒョウ! 木登りはお手のもの

続いてはヒョウ!しっかりした体つきでありながら、尻尾は長く、しなやかなプロポーションであるのがヒョウの特徴です。こちらも、まずは基本データから見ていきましょう!

種属哺乳網食肉目 ネコ科 ヒョウ属
体長100-190cm
体重30-70kg
生息地サハラ以南のアフリカ、中部以南のアジア など
スピード時速58km
種属哺乳網食肉目 ネコ科 ヒョウ属
体長100-190cm
体重30-70kg
生息地サハラ以南のアフリカ、中部以南のアジア など
スピード時速58km

レオパード柄としても有名なヒョウですが、実は、次に紹介するジャガーと体の模様がよく似ています。写真のように、全身に「ロゼット(バラ飾り)」と呼ばれる、バラの花が開いたような黒い斑点がついています。

「ロゼット」と呼ばれる斑点

バラ模様に、しなやかなプロポーションとは…なんてエレガントなの!勝手に、ネコ科動物のエレガント代表に任命したいと思います!

ここからは、ヒョウの生態における特徴的な3つのポイントを詳しく説明します!

特徴①:ヒョウは大型ネコ科の中で最も生息域が広い

ヒョウは、大型ネコ科動物の中では最も分布が広く、アジアからアフリカまで幅広い地域に生息しています。地域によって亜種が存在し、ユキヒョウやペルシャヒョウなどいくつかの種類も知られていますよね!

また、寒い地域に生息しているヒョウほど毛が長く、暑い地域に生息しているヒョウほど毛が短い傾向があります。

寒い地域に生息するヒョウ(左)と、暖かい地域に生息するヒョウ(右)

特徴②:種類によって異なるヒョウの鳴き声

【ペルシャヒョウ】ペルシャヒョウは、低いトーンで、「ガウ、ガウ、ガウ、ガウ」と短く吠えるような鳴き声をしています。鳴き声の動画はこちら

【ユキヒョウ】ヒョウの亜種である「ユキヒョウ」は、ネコのように「ニャア、ニャア、ニャア」と、とても可愛らしく鳴きます。の鳴き声の動画はこちら

特徴③:木登り上手で身体能力が高い!

ヒョウは運動能力が高く、木登りがとにかく上手!スイスイと簡単に登ってしまいます。

天敵が近くにいる時は、仕留めた獲物を木の上に引き上げ、木の枝や木の葉などで獲物をおおって隠すんだそうです!ヒョウにとっては木の上が安心できる場所で、死肉を漁るハイエナなどから獲物を守るのに打ってつけ。大きな獲物を木の上まで持ち上げられる、強い顎を持っていることもヒョウの強みです◎

木の上に獲物を置いておくだけではなく、木の上で待ち伏せをして上から襲いかかることもあるのだとか。ヒョウは跳躍力にも優れており、6mの距離をジャンプすることが出来ます。垂直には2.5mも飛ぶようです!

南米の最強捕食者・ジャガー! 泳ぎも狩りもピカイチ

続いてはジャガー!ジャガーはアメリカ大陸に分布する唯一のヒョウ属で、一般的に深い森林地帯に生息しています。ヒョウと見た目が似ていることから「アメリカヒョウ」と呼ばれることもあるのだとか。

種属哺乳網食肉目 ネコ科 ヒョウ属
体長110−180cm
体重60−120kg
生息地ニューメキシコからアルゼンチン北部
スピード時速80km
種属哺乳網食肉目 ネコ科 ヒョウ属
体長110−180cm
体重60−120kg
生息地ニューメキシコからアルゼンチン北部
スピード時速80km

ジャガーは、トラ、ライオンに次ぐ体の大きさ!がっしりずっしりという言葉がよく合います。
木に寝そべる姿はとても貫禄がありますね◎

ここからは、ジャガーの生態における特徴的な3つのポイントを詳しく説明します!

特徴①:ヒョウに似ているけど尻尾はかなり短い

ジャガーの体には、ヒョウと同じロゼット模様の斑点があり、さらにその中に黒く細かい斑点がついています。体の模様だけでは、ヒョウとの違いをパッと見分けるのが難しいかもしれませんが、体つきはヒョウとは全く異なります。

頭部は大きく、足も太いですが、尻尾はちょろりと短く体の半分ほどしかありません!

ジャガーの尻尾(左)と、ヒョウの尻尾(右)

特徴②:ライオンのように、迫力のあるヒョウの鳴き声

ジャガーの鳴き声は、どちらかというとライオンに近い吠えるような声です。「ガウ、ガウ、ガウ」と地面に轟くような、迫力のある鳴き声をしています。

鳴き声の動画はこちら

特徴③:泳ぎも狩りも得意な最強捕食者!

ジャガーは、ずっしりとした体つきでありながら、とても運動能力が高いです。ヒョウのように木登りも上手にこなしますが、何より泳ぐのがすこぶる上手!!

基本的にはカピバラやシカ、ナマケモノ、アルマジロなどの陸上の動物を食べますが、時には泳ぎ上手を活かして、魚やカメを捕えて食べます。ワニを捕まえることもあるんだそう!
このような特徴から、森林の中でも川や湖沼、湿地帯などの水辺を好んで生活をしています。

ジャガーは、南アメリカの森林で食物連鎖の頂点に君臨しており「最強の捕食者」と言われています。

ちなみに、ジャガーという名前は、南アメリカ先住民の”一突きで殺す者”という意味をもつ”ヤガー”からきています。

王者の象徴・トラ! 環境への適応力に優れてる

最後は日本画にもしばしば登場するトラ!一般的に百獣の王といえばライオンのイメージですが、中国で百獣の王といえばトラのこと。昔から武勇や王者のシンボルとして使われてきました。

種属哺乳網食肉目 ネコ科 ヒョウ属
体長170-310cm
体重180-245kg
生息地インド、東南アジア、中国、ロシア東北部
スピード時速49-65km
種属哺乳網食肉目 ネコ科 ヒョウ属
体長170-310cm
体重180-245kg
生息地インド、東南アジア、中国、ロシア東北部
スピード時速49-65km

トラは、現存するネコ科動物の中で最も大きな体をしています。トラの中でも「アムールトラ」という種類は、特に体が大きく300kgに達する個体もいるんだとか…!

ここからは、トラの生態における特徴的な3つのポイントを詳しく説明します!

特徴①:カモフラ用の黒い縦じま模様

トラの体全体に入った黒い縦じま模様は、茂みなどに身を隠す際に体の輪郭をぼやかす効果があると言われています。顔まわりの黒い縞は、鬼瓦っぽくてより強さを感じさせますね…!

この黒い縞はトラの個体によって模様が異なります。つまり、人間の指紋のようなもので、トラの研究者はこの縞模様を頼りに、個体ごとの研究を行っているようです!

特徴②:トラの鳴き声はウシに似ている!?

ライオンやヒョウ、ジャガーは短く吠えるような鳴き方ですが、トラは「ワオーン、ワオーン」と長く吠えるような鳴き声です。少しウシの鳴き声にも似ています…!

鳴き声の動画はこちら

特徴③:茂みに潜む絶対王者!優れた環境適応力

トラは、主に森や林、背丈の高い草むらなど見通しの悪い場所に多く生息しています。しかし、その生息地域は広範囲に渡り、密林や湿地、マングローブ、サバンナや標高3,000m以上の高山まで。トラは、環境への適応力に優れているのです!

雪にも馴染むトラ

ヒョウやジャガーと同様にトラも身体能力が高く、泳ぐ力に加え、跳躍力もあります。
体が大きいため、イノシシやシカ、スイギュウなど大きな動物も食べます。大型の獲物が捕えられないときには、泳ぎ上手を活かして魚やワニを食べることもあるようです!

まとめ

今回は大型ネコ科動物のライオン、チーター、ヒョウ、ジャガー、トラの生態とポイントをお届けしました!ここまで読んでくださったみなさんは、見分け方や習性の違いについて少し理解が深まったのではないでしょうか?同じネコ科でもそれぞれ特徴があって興味深いですよね。

ポッドキャストでも大型ネコ科動物の生態を楽しく話しているので、よかったら聞いてみてください!

さて、アフリカ旅では大型ネコ科動物に出会うことができるのか!?また別の記事でお会いしましょう!

※追記:実際に2022年に行ったアフリカ旅の旅レポはこちらから!

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サバンナ野宿、野生動物との遭遇、砂漠、塩湖などまさに冒険尽くし。アフリカ5カ国を周遊!

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