ラクダはかつて「沙漠の船」と呼ばれ、はるか昔から人々の輸送手段として活躍してきました。
ラクダの体には砂漠の過酷な環境を生き延びるための、驚くべき特徴がいくつも備わっています。
体の中で化学反応を起こすことだってできちゃう!?今回はヒトコブラクダの特徴を中心に、ラクダの生態をお届けします!
ラクダは2種類いる
ラクダ科の生き物は約4,500万年前に誕生しました。運搬用の家畜としてラクダが使われるようになったのは紀元前2000年ごろからです。
ラクダには、西アジアを原産とする「ヒトコブラクダ」と、中央アジアを原産とする「フタコブラクダ」の2種類がいます。ここではそれぞれの身体的特徴を見ていきましょう!
ヒトコブラクダ(西アジア原産)
体長 | 220-340cm |
体重 | 400-600kg |
生息地 | 北アフリカ、西アジア、オーストラリアなど |
ヒトコブラクダは、基本的(※)に家畜しかいません。
※オーストラリアの乾燥地にのみ、逃亡した家畜が野生化した個体群(外来種)が存在します。
暑い地域に生息するヒトコブラクダですので、体の毛は短く夏の暑さに強い!また、フラコブラクダに比べ、頭は小さくすらっとした体型をしています。
フタコブラクダ(中央アジア原産)
体長 | 250-350cm |
体重 | 450-690kg |
生息地 | ゴビ砂漠 |
フタコブラクダは、ヒトコブラクダとは違い、野生が存在します!
ただし、野生は1,000頭もおらず「絶滅危惧種IA類(CR)」に認定されていて「ごく近い将来、野生の絶滅の危険性が極めて高いもの」とされています。
フタコブラクダの体毛は、ゴビ砂漠の冬の寒さから身を守るため太く長いという特徴があります。
共通点
どちらのラクダも砂漠地帯に生息するため、砂漠に適した体のつくりになっています。
例えば砂から目や鼻を守るため、まつ毛は長く、鼻の穴は自由に開いたり閉じたりすることができるようになっています◎
また、砂の上を歩いても沈み込まないように、足の裏もやわらかく平らな形状をしています。
ヒトコブラクダのすごい生態
1.とんでもない力持ち
ヒトコブラクダはとっても力持ち!!1頭でおよそ300kgの重さの荷物を運ぶことができます。
私たちが旅に出る時の荷物は、2人合わせてだいたい100kgほどあります。2人で100kgの荷物を同時に持つことは重すぎて嫌なので、いつもカートを使うか、順番に荷物を移動させています。それなのにラクダくんたちその3倍は運ぶとは・・・!
ちなみに、ラクダは100kgほどの荷物なら1日で30〜40kmの距離を運ぶことができるのだそう。荷物がなければ時速25キロで走ることもできます。
プチ豆知識
実は「チーズの起源」の話にもラクダが登場しています。
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紀元前2000年頃のアラビアにて、商人たちは羊の胃袋で作った水筒に乳を入れ、ラクダに結びつけて砂漠を旅していました。
しばらく歩いて、のどが乾いて乳を飲もうと水筒を開けたところ、そこから出てきたのは乳ではなく白っぽい液体と固まり。試しにその白い固まりを食べたところ、驚くほど美味しいものだった。これがチーズの誕生と言われています。
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確かに登場していますね!!古くから人々の荷物を運んできたことがわかるエピソードです。
2.数ヶ月、何も食べなくても生きられる
ラクダは、通常30〜40キロの食べ物を必要とする大食いさん!草食動物のため主に草や葉っぱ、豆、とうもろこしを食べます。
そんな彼らが数ヶ月何もたべなくても生きられるのは、コブが重要な役割をしているからです。
ラクダのコブは実はすべて脂肪。食べたものは脂肪となりコブに蓄積されていきます。そして、栄養が取れないときにはコブにためておいた脂肪を使ってエネルギーをつくり出すのです。
そのため、何も食べていなくても2〜3ヶ月は平気で生きられます。コブに十分栄養を蓄えていれば、4〜5ヶ月は食べなくても大丈夫な場合もあるようですよ!
ちなみに、コブの重さは最大50キロ!かなりの重さです…。脂肪が使われるとコブは少しずつ小さくなって、最後は空気の抜けた風船のようにしぼんで垂れてしまいます。
人間をはじめ多くの動物は腹部や脇腹など「胃の周囲」に脂肪をつけますが、ラクダはコブに集中して脂肪がつきます。
なぜお腹ではなく、背中のコブに脂肪をつけるのか?これは、暑い砂漠で太陽の熱を体に届きにくくするため!
四つ足で歩くラクダにとっては、背中に盛り上がるように脂肪がついているほうが太陽の熱をさえぎるのにも好都合なのです。すごい!!
プチ豆知識:ラクダの口はとっても頑丈
ラクダは頑丈な口を持っているため、サボテンも食べられます。むしろ大好物。
アカシアのトゲトゲもバリバリ食べちゃうほど丈夫な口の持ち主です。
3.数週間、水を飲まなくても生きられる
人間は、自分の体重の60〜65%は水分でできていますよね。人間であれば、体内の水分が2%失われるとのどの渇きを感じ、3%失われると食欲不振やぼんやりするなどの症状があらわれ、4~5%失われると、疲労感や頭痛、めまいなどの脱水症状が起こります。10%以上失われると死にいたることも。
しかし、ラクダは人間と違い体重の3分の1(33%)の水分を失っても生きることができると言われています。
さらに、ラクダは自分で水分を作り出せるという不思議な体の持ち主。
脂肪に含まれる水素が体内の酸素によって燃焼することで、エネルギーと同時に少量の水が作れるようです。50キロの脂肪を燃やすと50リットルほどの水を作ることができる。これって体のなかで化学反応を起こしてるってこと!?不思議すぎます。
他にも尿の水分量を節約したり、汗を極力かかないようにして、2〜5週間は水を飲まなくても生きることができます。そのため、尿の濃さは海水の約2倍なんだとか…
プチ豆知識:ラクダはほとんど汗をかかない
ラクダは49度にもなる灼熱の砂漠でも、ほとんど汗をかきません。
本来、汗をかくのは体温を調整するためですが、ラクダは外気温に合わせて体温を34~40℃に変動させられます。そのため、気温の高い日中に熱を吸収し体温を40度まで高め、夜間に熱を放出することができるのです。これも砂漠の寒い夜を生き抜く体のしくみです。
4.一度に大量の水を飲むことができる
水を飲まなくても長期間生きることができるラクダですが、水分が必要なのには変わりありません。
人間の場合、1日あたりの水分摂取量はせいぜい2〜3リットル。活動量が多い人でも3.5リットルくらいと言われています。水はたくさん飲んだ方がいいとされていますが、飲み過ぎはダメで、例えば1日あたり6リットルで致死量になります。
その一方で、ラクダはなんと一度に200リットルの水を飲むことができます。その量、なんと人間の100倍近く!!しかも1日かけて飲むのではなく、ものの15分で飲みきってしまいます。
これは、ラクダだからできること。人間や他の動物は水分を過剰に摂取すると血中のナトリウム濃度が低下してさまざまな症状を引き起こし、最悪死に至るケースもあります。
ラクダがこのようなことができるのは、血液に含まれる赤血球の形が人間と違うからです。
人間の赤血球は多くの水分を含むと膨らんで破裂する一方、ラクダの赤血球は薄いため破裂しません。そのため一度にたくさんの水を飲むことができ、余分な水分を血液中に貯めることができるのです。
ヒトコブラクダの不思議な求愛行動
動物の求愛行動はその種によってさまざまですよね。ダンスを踊ったり、体を大きく見せてみたり、贈り物を捧げたり。時にはそれが魅力なの?と思える行動をする動物がいますが、実はラクダのオスもその一例です。
ラクダのオスが自分の魅力をアピールするときは、口の周りを泡(唾液)だらけにして、口の中から口蓋と呼ばれる器官を風船のようにふくらませて出します。
これが、まるで胃袋が出ているようで…人間の私たちからしたら正直ちょっと気持ち悪い…。
さらに、この時にクサイ唾液が大量に出ているほどセクシーらしい。べちゃべちゃ音を出して唾をたらすラクダもいます。
「オレの口蓋はこんなに大きくてキレイ!大量の唾液出せるくらい水分を蓄えてるぜ!」と、健康であることをアピールしているのかどうかはわかりませんが…ラクダのオスはこのような特殊な求愛行動をするのです。
まとめ
今回はラクダの生態について、特にヒトコブラクダの特徴を中心にお届けしました。コブの役割や赤血球の仕組みなど、驚きがたくさんあったのではないでしょうか。
モロッコ旅では実際にヒトコブラクダに乗りました!その時のエピソードはまた別の記事で詳しくお伝えしますね♪
ポッドキャストでもこのテーマについて楽しく語っています。よろしければ、ぜひこちらも聞いてみてくださいね!