王家の谷を巡る・第二弾!前回の「ツタンカーメン王墓」に続き、今回は「ラムセス5世&6世の王墓」についてご紹介します。この王墓の魅力は、なんといっても圧倒的なスケールと色鮮やかな壁画。古代エジプトの死生観や当時の天文知識がわかるレリーフは見ものです!
ツタンカーメン王墓に関する記事は以下から。王家の谷の概要にも触れていますのでぜひチェックしてみてくださいね!
ラムセス5世、6世王墓とは?
ラムセス5世は、ツタンカーメンが亡くなってからおよそ200年後に登場した人物。ラムセス4世の息子で、ラムセス6世とは甥と叔父の関係です。
前回の記事「王家の谷「ツタンカーメン王墓」を訪れた!見どころや注意点をご紹介」で、ツタンカーメン王墓は1922年にイギリスの考古学者「ハワード・カーター」によって盗掘を受けていない完全な状態で発見されたと紹介しました。実はこの発見、ラムセス5世・6世の王墓とも深く関わっているんです。
というのも、ツタンカーメンの墓は後の時代につくられたラムセス5世・6世の王墓の建設作業用の小屋の下に埋もれていたためです!!結果的にツタンカーメン王墓はラムセス5世・6世の墓によって守られるかたちになり、3000年以上もの間、奇跡的に発見されずに残ったわけです。

ラムセス5世&6世の王墓に入るには、王家の谷の入場料に加えて20エジプトポンド(2025年10月時点)を支払う必要があります。訪れる前に以下のオンラインサイトで最新料金をご確認ください!
オンラインチケット購入サイト(エジプト観光古物省公式):https://egymonuments.com/book-date/13
ラムセス5世はどんな人物?
ラムセス5世は新王国時代20王朝のファラオ。治世はおよそ紀元前1145年〜紀元前1141年の約4年と短い期間でした。彼が王位を継いだ時代は、神官団の政治介入や各地での暴動など王権の弱体化が進んでおり、さらには天然痘まで流行するという苦難の連続でした。
ラムセス5世自身も天然痘に感染して若くして命を落としたことが、ミイラの分析によって明らかになっています。
ラムセス6世はどんな人物?
甥の短い治世の後に王位を継いだのがラムセス6世です。彼の治世もまた8年と短く、ラムセス王朝の衰退期にあたります。経済・軍事力が弱まりつつあった中、ラムセス6世は5世の墓を大規模に拡張し自らの墓に流用しました。華やかな装飾も施され、美術的価値の高さから王家の谷の中でも人気のある王墓です。
一部の研究者は、彼がクーデターで王位を奪った可能性も指摘しています。前任者の墓を流用したこともふまえると、なかなか訳ありのファラオだったのかもしれませんね。
いざ、王墓の中へ!壁画が語る古代の神々と死生観
ラムセス5世&6世王墓の入り口は、前回ご紹介した「ツタンカーメン王墓」から歩いてわずか数分の場所にあります。中へ足を踏み入れた瞬間、その規模の違いに正直圧倒されました。体感でツタンカーメン王墓の10倍以上の広さはあったんじゃないかな。。
この王墓の大きな特徴は、3000年の歳月を経た現在でも色鮮やかに残る壁画です!そこには古代エジプト人の死後の世界への考え方や天体知識が反映されており、王が来世で無事に復活できるよう導くための呪文や祈りが順序立てて記されています。

ラムセス5世・6世の王墓は、地下深くへと真っすぐ伸びる一連の下り回廊で構成されており、はじめの回廊では『洞窟の書』と『門の書』が描かれています。『洞窟の書』は老いた太陽神が洞窟を旅する場面で、その旅路の中で太陽神に敵対する者たちの末路が暗示されており、一方の『門の書』では、太陽神“ラー”が通過する冥界の12の門が描かれます。

上の画像ように、古代エジプトの壁画では、フンコロガシ(スカラベ)の絵がいたるところで登場します!古代エジプトでは、フンコロガシが糞を転がす様子から太陽の運行を連想し、また糞から新しい命が生まれるように見えたことから再生と生命力のシンボルとされ崇められていたようです。
以下はラムセス3世の墓と、メルエンプタハ王の墓に描かれていたフンコロガシです↓
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第一回廊の先には柱のある大広間が広がり、ここでも引き続き『門の書』と『洞窟の書』の場面を見ることができます。柱には古代エジプトの神々が描かれていました。

続いて、第二回廊を抜けると最奥の玄室です。第二回廊の壁画には『アム・ドゥアドの書』を見ることができます。『アム・ドゥアトの書』は太陽神“ラー”が西の地平線に沈んだ後、翌朝東の地平線に現れるまでの12時間の冥界の旅を描いた葬祭文書。
この辺りから壁画の色がさらに濃くなってきました!!

玄室に辿り着くと、一番最初に目に入るのはラムセス6世の石棺です。

そして右手側の空間には、修復された四角い棺も置かれていました。

玄室の壁には、オシリス神の復活を表す『大地の書』の場面が描かれています。

さらに、玄室の天井には『昼の書』『夜の書』と呼ばれる、太陽と星の運行を示すレリーフが刻まれています。


このように壁画は、太陽神“ラー”の冥界での旅路と王の死後の復活を段階的に示しており、王が来世で再生し永遠に生きるための「マニュアル」のような役割を果たしているのです。
3000年以上前に描かれたとは思えないほど色鮮やかに残る壁画は、まるで絵本を見ているかのように美しい。エジプトの星座に興味があるきじーは、少しだけ理解ができるヒエログリフと壮大な壁画から、星や神々、星座の意味などを考えながら時間もないのに思わずじーーっと見入ってしまいました。
王家の谷は見どころがいっぱい
ラムセス5世&6世の王墓を出たあとも、しばらく王家の谷を回りました。

王家の谷は24の王墓を含む64の墓が確認されているため見どころいっぱいです。たとえば、古代エジプトで大きな権威を持った“最後”のファラオと称されるラムセス3世の墓は、王家の谷の中でもかなり巨大なお墓。(ラムセス3世は偉大なファラオだったため、ナイル川沿いに葬祭殿もあります)

王家の谷の入場料さえ払えば、追加料金なしで入れます◎ 内側はラムセス5世&6世の墓のように真っ直ぐに回廊が伸びており、柱のある広間では神々とファラオのレリーフを見ることができます。




ほんと、色鮮やかに壁画が残っていますね。

ところ狭しと並ぶヒエログリフも見事でした!!

こちらも、追加料金なしで入れるメルエンプタハ王墓。メルエンプタハはラムセス2世の第13王子で、王に即位したのは60歳を超えてからでした。

自然災害の影響で壁画の多くは破壊されているものの、わずかに残るレリーフから当時の美しさと装飾の名残を感じ取ることができます。
王家の谷は暑い。水分補給をしっかりと
王家の谷は噂どおりとても暑かったので、これから訪れる方はぜひ水分をたっぷり持っていかれることをお勧めします!

2回の記事に分けて王家の谷の感想をお届けしましたが、いかがでしたか?
誰の目にも触れないはずの墓でありながら、ファラオが復活しても不自由しないようにという想いを込めて、これほどまでに精巧に造られ、たくさんの宝が納められた――。それだけに、当時の人々にとってファラオがどれほど絶対的で大きな存在だったのかを改めて実感させられる時間でした。
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