カンガルーといえば“お腹のポケット”。でもその中身は?
オーストラリアを代表する動物・カンガルー。その最大の特徴といえば、お腹のポケット=育児嚢(いくじのう)です。
あの袋の中にはなんと乳首が4つもあり、赤ちゃんカンガルー(ジョーイ)はそこからお乳をもらいます。じつは、カンガルーの育児は人間とはまったく違う“超早産型”なんです。
妊娠1ヶ月、体長2センチで生まれる赤ちゃん
カンガルーは有袋類。人間のような胎盤がなく、妊娠期間はわずか1ヶ月ほど。
生まれてくる赤ちゃんの大きさは約2cm・1g。まるで1円玉のような軽さです!
毛もなく、目も開いていない赤ちゃんは、母親のお腹をよじ登って袋の中へ。数分間の命がけの旅です。袋の中にたどり着くと、乳首に吸いついて成長を始めます。
袋の中での成長と「お母さんのケア」

赤ちゃんは袋の中で約8ヶ月かけて育ちます。最初の3〜4ヶ月は袋の中だけで生活し、4〜6ヶ月でようやく顔を出すように。8ヶ月を過ぎると出たり入ったりを繰り返しながら、独り立ちの準備をします。
袋の中では排泄も行うため、母カンガルーは自分の舌でポケットを掃除。短い妊娠でリスクを減らし、袋の中でじっくり育てる。これがカンガルーの生存戦略と母性愛なのです。
カンガルーは筋肉ムキムキ!
野生のカンガルーを見たことがある人は、彼らの“筋肉”に驚くはず。特にオスはまるでボディビルダーのよう。
その理由は——メスをめぐる闘い。発情したメスに最初に交尾できるのは、最も強いオス。
彼らは前足での殴り合い、両足でのキックで戦い、勝者が恋をつかみます。蹴りの威力は人間に重傷を負わせるほど強力。
しかもメスの発情期は特定の季節に限られず、オスたちは常に戦闘モード。結果、筋肉は日々鍛えられていくのです。
ジャンプ力とスピードの秘密
カンガルーは跳ねて移動する唯一の大型動物。一回のジャンプで最大8メートル、最高速度は時速50kmに達します。

後ろ足とアキレス腱がバネのように働き、少ないエネルギーで遠くまで跳べる仕組み。ただし、左右の足を同時に動かすことしかできないため、実はあの「飛び蹴りキック」も両足同時の動きです。
太い尻尾は“5本目の脚”
カンガルーの太く長い尻尾は飾りではありません。歩くとき、尻尾を地面につけて体を支える“第5の脚”の役割を果たしています。
また、オス同士の闘いではこの尻尾でバランスを取りながら後ろ足を持ち上げ、強烈なキックを繰り出します。
さらにカンガルーは、体の構造上、後ろ向きに歩くのが非常に困難です。この性質が「常に前進する国」を象徴するものとして、カンガルーはオーストラリアの国章にも描かれています。
カンガルーの仲間たち
アカカンガルー
地球上で最も大きい有袋類。立ち上がると2mを超える個体も。
オスは最大90kg(通常のオス:50〜70kg程度)に達することもあり、乾燥地帯の“キング”の風格です。
オオカンガルー
草原地帯に多く、灰色がかった毛色が特徴。やや小柄ですが運動能力は抜群◎
キノボリカンガルー
オーストラリア北部やパプアニューギニアの熱帯雨林に生息。
木の上を跳び移る珍しい種類で、ベネット・キノボリカンガルーなどが知られます。キノボリカンガルーの多くの種が絶滅危惧または準絶滅危惧に指定されています。
ワラビー
小型で尾が短く、後ろ足もやや小ぶり。ジャンプでの移動や育児嚢など、基本的な特徴はカンガルーと同じです。

カンガルーとの共存と交通問題
オーストラリア全土には約4,500万頭のカンガルーが生息しており、人口(約2,600万人)の約2倍にもなります。
夜行性・薄明薄暮性のため、夜明けや夕暮れに道路へ飛び出すことも多く、交通事故の原因にも。カンガルーの死体が道路に横たわっている光景もしばしば。
車のフロントに「ルー・バー(Roo Bar)」というバンパーを付けて走る車もよく見られます。生態系や人との距離をどう保つかが課題になっています。
おわりに:お腹の袋の中にあるもの
袋の中は、赤ちゃんの命を育てる温かい場所であり、母カンガルーにとっては命を守る聖域。彼らの生き方には、“厳しい自然の中でも前へ進み続ける”というメッセージが込められています。
オーストラリアの国章に刻まれたカンガルーの姿は、「決して後ろを向かず、前へ進み続ける国」を象徴しているのです。

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