コアラのユーカリだけで生きる秘密!1日20時間寝る、母の愛

コアラのユーカリだけで生きる秘密!1日20時間寝る、母の愛

オーストラリア旅行記

コアラは世界で1種しかいない

「コアラって、こんなに有名なのに1種類しかいないって知ってた?」
最初に本を読んだとき、私は本当に驚きました。カンガルーは50種類以上もいるのに、コアラはコアラ属コアラ科のたった1種だけ。昔は“レインフォレストコアラ”のように他の仲間もいたそうですが、2000万年以上前にすべて絶滅してしまいました。

ただし同じコアラでも、住んでいる地域によって姿は少し違います。
北方の暖かい地方に住むコアラは小柄で毛が短く、色も淡いグレー。動物園でよく見るのはこのタイプです。一方、南方の寒い地域に暮らすコアラは体が大きく、毛が長くて黒っぽい色をしています。南方系は保護活動が進んでいて、逆に数が増えすぎている地域もあるんだとか。

名前に「ベア」とつくけれど、コアラはクマではありません。18世紀後半にオーストラリアにやってきたヨーロッパ人が、姿かたちがクマに似ていたことから“コアラベア”と呼んだのが始まりです。

1日20時間眠る理由

ユーカリを食べるコアラ

コアラがほとんど一日中眠っているのは、食事のせいです。彼らはユーカリの葉しか食べません。
ユーカリは、香りのもとになる油分やタンニンという成分を含み毒性を持ちます。栄養もとても少ない植物です。ほとんどの草食動物にとっては“食べられない葉”なのですが、コアラは「それなら独占できる!」と進化の道を選びました。

彼らの盲腸はなんと2メートルもあります!ここで葉を発酵させて毒を分解し、少しずつ消化しています。盲腸の中では無数のバクテリアが働いていて、栄養を作り出す小さな工場のような場所です。とはいえ吸収できるのは全体の25%ほど。だからこそ、体を動かすエネルギーを極力節約するために、コアラは一日のほとんどを眠って過ごすのです。

ちなみにユーカリの匂いはコアラのフンからもするそう。しかもユーカリの葉は栄養が少ないぶん、1日の平均的には500〜800g程度ほど食べないと足りません。食事と休息を繰り返す暮らしが、彼らのペースなんですね。

コアラは“水を飲まない”

コアラは基本的に水を飲みません。必要な水分のほとんどをユーカリの葉から摂っています。乾燥が厳しい時期など、葉に水分が足りない場合には水を飲むこともありますが、それは例外です。

実は「コアラ」という名前自体が、“水を飲まない”という意味のアボリジニ語(ダルーグ族の言葉)が由来とされています。名前からも、彼らがどれほど乾いた環境に適応してきたかが伝わってきます。

コアラの子育ては驚きの連続

妊娠期間はたったの35日。体長わずか2センチ、重さ1グラムにも満たない赤ちゃんが生まれます。毛もなく、目も見えない状態で生まれた赤ちゃん(ジョーイ)は、本能のままに母親のお腹をよじ登り、袋の中へ。6ヶ月のあいだ、袋の中でお乳だけを飲んで育ちます。

そして6ヶ月ごろ、赤ちゃんが口にするのが“パップ”と呼ばれる離乳食。驚くことに、それは母コアラのフンです。普通のフンではなく、半分だけ消化されたユーカリでできた特別なもの。赤ちゃんはそれを食べることで、ユーカリを消化するための腸内細菌を自分の体に取り入れていきます。

コアラの親子(南方系のコアラ)

やがて袋からはみ出すほど成長すると、赤ちゃんは母親の背中にしがみついて生活します。栄養の少ないユーカリを食べながら、自分より重い赤ちゃんを背負い続ける母コアラ。そう考えると、彼女たちは本当にタフで、愛情深い存在です。

コアラはいま、絶滅の危機にある

可愛い見た目とは裏腹に、コアラはいま絶滅危惧種に指定されています。
毛皮を目的に乱獲された過去に加え、近年では気候変動による干ばつや森林火災が深刻です。

2019年から2020年にかけてオーストラリアで起きた大規模火災では、北海道の2倍以上の森林が焼け、推定数万頭のコアラが犠牲になったとされています。森を失ったことで餌となるユーカリも減り、今後さらに個体数が減る可能性が高いといわれています。

現在、野生のコアラの数は10万〜30万頭と推定され、オーストラリア政府は2022年に「絶滅危惧(Endangered)」として指定を強化しました。ほんの100年前、毛皮産業が盛んだった頃には数百万頭以上いたともいわれているので、減少のスピードは恐ろしいほどです。

可愛いだけじゃない、生きるための進化

本を読んで改めて感じたのは、コアラは“のんびり屋”ではなく、むしろ“生き抜く天才”だということです。毒のあるユーカリを食べ、ほとんど水を飲まず、過酷な大陸で進化を続けてきました。

コアラを見るとき、ただ「可愛い」だけじゃなく、その静かな姿の裏にある生きる知恵と努力を想像してみてください。きっと、いつもより少し深く、彼らを愛しく感じるはずです。

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