エジプトのラマダンで体験した、心温まる”おもてなし”の真実

エジプトのラマダンで体験した、心温まる”おもてなし”の真実

ラマダン期間中に訪れたエジプトで、夕暮れ時に不思議な体験をしました。
見ず知らずの人々が、通りすがりの私たちに食べ物を差し出してくれるんです。一人、また一人と…断る間もなく食べ物を与えてくれる!気がつけば両手が食べ物でいっぱいに。

なぜ、こんなにも親切にしてくれるのでしょうか?

その答えは、イスラム教の教えと、古代エジプトから脈々と受け継がれてきた「人を思いやる心」にありました。今回は、エジプトで体験した心温まるエピソードをご紹介します。

イスラム教の宗教行事「ラマダン」とは?

7世紀ごろ、メッカの商人ムハンマドによって創始されたイスラム教。アメリカのシンクタンク「Pew Research Center」の発表によれば、現在の世界のイスラム教信者は24.9%を占め、第一位のキリスト教に次ぐ大きな宗教として知られています。

そんなイスラム教における主要な宗教行事のひとつが「ラマダン」。皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

ラマダンは「断食月」と呼ばれ、イスラム暦の9番目の月に行われます。この期間中、イスラム教徒は日の出から日没まで一切の飲食を断つのです。

イスラム教の基礎知識や、ラマダンについては以下の記事もあわせてご覧ください。

外国人の私たちが“ラマダンの恩恵を受けた”話

私たちがエジプトを訪れたのは、まさにラマダン期間中のことでした。
ルクソールからアスワンへ向かう道中、夕暮れ時の午後6時ごろ。突然、ひとりの少年が手を振って私たちの車を止めました。

美しい夕暮れの景色

現地のドライバー・マスリーが少年から何やら袋を受け取っています。何か買わされるのかなと身構ええつつも、彼がとても笑顔だったので差し出されるがまま受け取りました。

マスリーに事情を尋ねると、「もうすぐ日没で飲食が解禁される時間だから、みんなに配っているんだよ」とのこと。なんと食べ物と飲み物を無料で配っているというのです!

そういえば、DAY1で訪れたハンハリーリ市場でも、地元の方が笑顔でスープやサンドイッチをご馳走してくれたことがありました!それと同じような感じかな…まさか車を停めてまで分けてくれるとは!!
ハンハリーリ市場の出来事はこちらから。

次々と差し出される食べ物

受け取ったのはナツメヤシの実、500mlの水、そしてパックのジュース。お腹も空いていたし喉も渇いていたので、車内でありがたくいただきました。

ナツメヤシの実、500mlの水、パックのジュース

しかし、驚きはこれだけでは終わりません!

再び走り出しますが、何度も車の前に人が立ちはだかり、笑顔で「これ食べて〜!」と次々に食料を差し出してくるんです。「他の人からもらったからもう大丈夫!」とお断りするのですが、彼らは「いいから、いいから!」と笑顔で渡してくれるのです。

搾りたてのジュースを配っている男性もいました!ジュースの入ったビニール袋にストローが刺さった斬新なスタイル。

続々と与えられる食べ物と飲み物

断食明けの一口目はナツメヤシの実

気がつけば車内には頂き物の食べ物がたくさん。絞りたてのオレンジジュースやクロワッサンなどもいただきましたが、ナツメヤシの実と飲料水の確率が高かったです!どうやら、断食を解く最初の食事として一般的なのは、ナツメヤシの実と水だからみたい。

これは、イスラム教の創始者ムハンマドが実践していた作法を真似たもの。ムハンマドは「一口目は熟したナツメヤシ、なければ乾燥したナツメヤシ、それもなければ水」という順序を徹底していたと伝えられています。

イスラム教の教えと古代エジプトの“人を思いやる心”

イスラム教では教えに従うことで死後に天国へ行くことができ、特にラマダン期間中の善行は、神からより大きな報いを得られるとされています。

偽善ではない、純粋な善意

食べ物を無料で配るということにも驚きですが、さらに印象深いのは彼らの屈託のない笑顔。みんなすごく幸せそうに笑っているんです。彼らの笑顔を見ていると「善い行い=天国に行くため」という打算的な動機は全く見えません。心から、人々に喜んでほしいと思って分け与えているように感じられました。

それに、彼ら自身もこのラマダンの習慣を素晴らしいものだと考えているそうで、海外の人にもこの文化を知ってほしいと願っているのだそう。だからこそ、外国人の私たちにも快く分けてくれたのだと思います!

エジプト特有の「旅人へ手を差し伸べる」文化

実は、エジプト以外の多くのイスラム国家では、もともとの「困っている人に分け与える」という側面が強く、食料の配布は主にモスクやボランティア団体が行うのが一般的です。日本でいうところの「炊き出し」のイメージに近いでしょうか。

しかしエジプトでは、古代エジプトの時代から「砂漠で困っている旅人に食料や水を分け与えること」が美徳とされてきました。その価値観が数千年の時を超えて、今も人々の心に深く根付いているようです。

エジプトの黒砂漠

だからこそ、イスラム教徒でもない海外からの旅行者である私たちをこれほど温かく受け入れてくれたのだと思います。イスラム教の「困っている人を助ける」という教えだけでなく、古代エジプトの「旅人に手を差し伸べる」という温かな精神が根底に残っている、そう感じずにはいられない出来事でした。

こちらの記事に関するポッドキャストも公開していますので、ぜひチェックしてみてください!

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