エドフの街に佇むホルス神殿へ!可愛いホルス像に大興奮

エドフの街に佇むホルス神殿へ!可愛いホルス像に大興奮

ルクソールから南へ約120キロ。ナイル川西岸の街・エドフに、ひとつの壮大な神殿が建っています。それが、約2000年前に建てられたとは思えないほど今も美しい姿で残る「ホルス神殿」です!

この神殿には、古代エジプト神話の中でも特に有名な「ホルスとセトの戦い」のシーンがレリーフとして描かれています。今回はそんなホルス神殿を実際に訪れてきたので、神殿の基本情報とあわせて見どころをお届けします!!

ホルス神殿(エドフ神殿)とは?

エドフの街にあるホルス神殿は、一般的にエドフ神殿と呼ばれています。

この神殿は、ルクソールの街で見てきた遺跡群(王家の谷やカルナック神殿など)が隆盛しただいぶ後の時代、プトレマイオス朝の時代につくられました。建設が始まったのは紀元前237年で完成したのは紀元前57年。実に180年もの年月をかけた一大プロジェクトでした。

プトレマイオス朝は、紀元前306年からローマの支配下に入るまでの約300年続いた“古代エジプトのギリシャ系の王朝”です。あの有名なクレオパトラ7世が最後の女王として君臨したのも、このプトレマイオス朝でした。建築様式からはエジプトとギリシャの融合が見られ、プトレマイオス朝時代の神殿は伝統に沿った形で行われることが多いのだそう。その代表例がこのホルス神殿と言えます◎

ハヤブサの神「ホルス」

ホルス神殿は、ハヤブサの頭をもつ天空神「ホルス」に捧げられた神殿です。

古代エジプト神話において重要な神のひとりとされるホルス。彼は、冥界の神オシリスと豊穣の女神イシスの息子、そして神話のエピソードのひとつ「ホルスとセトの戦い」で争うことになるセトの甥にあたります。

ホルスとセトの相関図

ホルス神殿の壁には、ホルスとセトの壮絶な戦いを描いたレリーフが刻まれていますので、この神話についても少し触れておきましょう!

▽ホルスとセトの戦い

物語のはじまりは、兄弟の間に生まれた嫉妬からでした。王位を継いだ兄オシリスを、弟セトが妬み、ついには殺害してしまいます。セトはオシリスの遺体をバラバラにしてエジプト中にばら撒きましたが、妻イシスは夫を想い、魔法の力でその身体を集めて復活させました。しかし完全には蘇らず現世に留まることができなかったため、オシリスは冥界の王となります。

その後、二人の子であるホルスが成長し、父の仇であり王位を奪ったセトに挑みます。戦いの中でホルスは左目を失い、助けに入った母イシスもセトによって両手を切り落とされてしまうなど過酷な戦いが続きましたが、最終的にはホルスが勝利。父オシリスの意志を継ぎ、正統な王として即位するという物語です。

ホルスはハヤブサの姿、もしくはハヤブサの頭を持つ人間の姿で描かれることが多く、その鋭い眼光は太陽神ラーの目でもあり、すべてを見通す「神の目」として畏れられました。ホルス神殿では可愛いハヤブサの像を見ることができますよ!

保存状態が良いのはなぜ?

ホルス神殿は、古代エジプトの遺跡の中で極めて保存状態が良い神殿とされますが、その理由は“長らく土砂に埋もれていたから”です。

ホルス神殿は、吹き寄せられた砂漠の砂やナイル川の沈泥によって徐々に埋もれ、やがては地上から姿を消してしまいました。神殿の上に家が建てられるほど完全に埋まっていたそうです。
しかしそのおかげで、風雨による侵食を免れ、壁に刻まれたレリーフや彫刻が今も驚くほど精巧な姿で残っています。

精巧に残るレリーフ

神殿が発掘されたのは1860年ごろのこと。フランス人の考古学者オーギュスト・マリエットによって発掘作業が開始され、徐々にその全貌が明らかになりました。

とはいえ、他の神殿と同じくイコノクラズム(偶像破壊)の痕跡も見られます。
エドフ神殿は、西暦391年のローマ帝国での非キリスト教崇拝を禁止するテオドシウス1世の勅令に従い、宗教施設としての役割を終えました。神々の姿が刻まれたレリーフの多くは、信仰の対象とされることを避けるために意図的に削り取られています。

削り取られたレリーフ

営業時間と入場料

2025年10月時点の営業時間と入場料金は以下の通りです。

営業時間:水・日→ 午前6:00〜午後5:00
     月・火・木・金・土→ 午前7:00〜午後5:00
入場料金:大人550エジプトポンド、学生275エジプトポンド

実際に訪れる際は、以下のエジプト観光・考古省のWebサイトから最新情報をご確認ください↓
https://egymonuments.gov.eg/en/monuments/temple-of-edfu

閉館間近のホルス神殿を見学

ルクソールからエドフへ向かう

私たちは、ルクソールからアスワンへ移動する道中でこのホルス神殿に立ち寄りました。ルクソールから南へおよそ120キロ、車で3時間ほどかけて閉館間近のホルス神殿へ到着。

第一塔門

第一塔門の大きさは高さ40m、幅67m。カルナック神殿のアメン大神殿に次ぐ大きさです。

第一塔門

塔の表面にはプトレマイオス12世が敵を打ち倒す姿や、ホルス神に捧げ物をする姿がレリーフとして描かれてました。このレリーフからは、一目で「ここはホルス神に捧げられた神殿なのだ」と感じられます◎

敵を打ち倒すプトレマイオス12世
見守るホルスとハトホル

中庭

第一塔門を抜けると、石柱が並ぶ中庭にでました。ここには32本の柱が建っています。

中庭
中庭側から見た第一塔門のレリーフ

中庭に刻まれたレリーフの中で特に注目したいのが、ホルスの妻であるハトホルを祀った「ハトホル神殿(エドフから北へ約170km、デンデラという街にあります)」との共同祭の様子です!
彼らの御神体はそれぞれの神殿に分けて置かれていたようですが、年に一度のこの共同の祭りの際に、船を使ってハトホルの御神体をホルス神殿へ運ぶという儀式が行われていました。この祭りは「美しき出会いの祭り」と呼ばれ、古代エジプトで最も重要な宗教行事のひとつ。ハトホルの聖船がナイル川を渡り、エドフに到着すると盛大な祝祭が行われたと伝えられています。年に1度しか出会えないとはまるで織姫と彦星の再会のようです…!

また、第一塔門前に続き中庭にもきじーが大好きなホルスちゃんが佇んでいましたよ〜!!

デフォルメされているので体は小さく幼児体型。そんな愛らしい姿でありながら、冠をかぶり正装をする姿からはキリッとした清々しさを感じさせます。なんだろう…そこもまた可愛い。
例えるなら、5歳くらいの小さな子どもがよそ行きの綺麗な服を着て、小さな体で一生懸命に責任を果たそうと背筋を伸ばしているような、そんな健気な可愛いさなんです。

ちなみに、この冠は取り外しができるようで、儀式の際には装飾のついた冠に付け替えられていたのではないかと考えられています。

列柱室

中庭を抜けると第一列柱室、第二列柱室と続きます。
ドドンと太く大きな列柱。閉館間近だったので他の人の映り込みもなく、落ち着いて撮影することができました!!

列柱室

列柱室からは神殿の外へと出ることができ、外壁一面に描かれた壮大なレリーフを間近で見ることができます。ここには、前述したホルスとセトの戦いも描かれています。このレリーフは神殿で最も有名な見どころのひとつで、ホルスがセトを銛で突く場面など、戦いの様子が生き生きと表現されていました。

神殿の外壁

物語を追いながら見学すると一層楽しめると思います◎

至聖所

外壁をぐるっと見学し列柱室に戻った後は、前室を通り最奥の至聖所へ向かいます。
かつての至聖所は、ファラオと高位の神官のみが入ることを許された神殿で最も神聖な場所。ここでは御神体や祭りで使われる聖船が保存されたようです。

至聖所を取り囲むようにいくつかの小部屋もありました!通路にもびっしりとレリーフが刻まれていましたよ〜!

小部屋の壁画

閉館間近の見学は意外とおすすめ

今回はホルス神殿を訪れた感想をお届けしました!

レリーフの圧倒的な保存状態に加え、プトレマイオス朝時代の建築を楽しめるホルス神殿。
閉館間近だったためほぼ貸切状態で見学できたのはラッキーでした。係員は早く閉めたそうでしたが、周りの人を気にせず見学できるという点ではかなりおすすめです!!

ナイル川を渡る船

エドフはルクソールとアスワンの中間地点にあり、ナイル川クルーズの寄港地としても人気だそうなので、興味のある方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか!

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