闇夜に浮かぶコム・オンボ神殿!幻想的なライトアップと二神の物語

闇夜に浮かぶコム・オンボ神殿!幻想的なライトアップと二神の物語

エジプトには数多くの神殿が残されていますが、その中でも一風変わった存在が「コム・オンボ神殿」。なんとこの神殿、一つの建物に二柱の神様が祀られた珍しい構造なんです!!昼間とはまた違う、ライトアップされた幻想的な姿を楽しめるのも魅力のひとつ。今回はそんなコム・オンボ神殿の見どころを基本情報とあわせてお届けします!

コム・オンボ神殿とは?

コム・オンボ神殿はルクソールからおよそ180km南下し、エドフからさらに約60km進んだ“コム・オンボ”という街にあります!この街は、ナイル川のほとりに位置し古代より交易の要所として栄えてきました。

建設が始まったのは紀元前2世紀頃、プトレマイオス6世の治世とされています。エドフのホルス神殿と同じくプトレマイオス朝の時代につくられた神殿ですが、それ以降も前庭や外側の部分はローマ帝国のティベリウス、ドミティアヌス、カラカラ帝の治世へと引き継がれて完成しました。そのため、古代エジプトの伝統的な様式に加え、ギリシャ建築の影響も見られます。

二神に捧げられた一つの神殿

コム・オンボ神殿最大の特徴は、ハヤブサの神・ホルスとワニの神・セベクの二神に捧げられていることです!

通常、一つの神殿には一柱の主祭神(もしくは神族)が祀られることが一般的。しかし、このコム・オンボでは、全く異なる二神——ホルス神とセベク神が同等の立場で祀られているという、とても珍しい構造をしているんです!

ホルス神とセベク神が描かれた壁画

前回の記事で、エドフにある神殿でもホルスが祀られていることをご紹介しましたが、実はコム・オンボ神殿のホルスは、同じ神でありながら少し異なる役割を持っています。

エドフのホルス神が「復讐者であり王」としての側面を持つのに対し、コム・オンボのホルス神は「大ホルス」を意味するハロエリスと呼ばれる存在。このハロエリスはワニの神・セベクと対になり、秩序や正義をつかさどる神として崇拝されていました。

一方のセベクは、豊穣と力の象徴であると同時に人々に畏れられた存在でもありました。当時のナイル川には多くのワニが生息しており、人々はセベク神に対して敬意と畏れの両方の気持ちを抱いていたようです。

ホルスとセベク

つまり、コム・オンボ神殿では、秩序と混沌、光と闇といった“相反する二つの力”を象徴するハロエリスとソベクが、対をなして祀られているのです。

エドフにある「ホルス神殿」については以下の記事でご紹介していますので、興味のある方はぜひあわせてご覧ください。

古代エジプトの知恵が刻まれたレリーフ

コム・オンボ神殿でも、これまで見てきたエジプトの遺跡のように数多くのレリーフを見ることができます。

特に有名なのが宗教祭礼の日付や儀式を記した暦のレリーフと、出産のシーンや古代の医療器具を描いた医療関係のレリーフです。特に後者は、古代エジプトの高い医療知識・技術を示す貴重な資料!メスや鋏、ピンセット、鉗子など、現代でも使われている医療器具の原型が細かく描かれているんです。

この画像には分娩台に座る女性、医療器具が描かれています。今から2000年以上も前にこのような技術があったとは驚きですよね!!

医療関係のレリーフ

営業時間と入場料

2025年10月時点の営業時間と入場料金は以下の通りです。

営業時間:午前7:00〜午後9:00
入場料金:大人450エジプトポンド、学生225エジプトポンド

実際に訪れる際は、以下のエジプト観光・考古省のWebサイトから最新情報をご確認ください↓
https://egymonuments.gov.eg/en/monuments/kom-ombo-temple

ライトアップされたコム・オンボ神殿を見学

この日の最終目的地はアスワン。朝からルクソールの遺跡群を巡った後、アスワンまでの道中でホルス神殿、そしてこのコム・オンボ神殿に立ち寄りました。

コムオンボ神殿に到着

到着した時にはすでに日没を過ぎており、あたりは真っ暗。闇夜に浮かび上がる神殿は、昼間とは違う幻想的な雰囲気に包まれていました。

2つの入口

この神殿の大きな特徴は、入口から最奥の至聖所まで二神それぞれのためにつくられた完全な左右対称デザインにあります。

2つの入口

神殿の正面から向かって左側はハヤブサの神・ホルス、右側はワニの神・セベクに捧げられています。古代の人々は、どちらの神を崇拝するかによって入口を選んでいたのだそう。この完全な左右対称構造は、エジプトの神殿建築の中でも非常に珍しく貴重な存在です!

ジョジョの舞台となった列柱室

入口を抜けると目の前には列柱が広がります。実はこの列柱室、漫画『ジョジョの奇妙な冒険 第3部』に登場する戦闘シーンのモデルの一つとされ、ファンの間でも話題の場所なんです。

列柱室

ライトアップされた列柱は迫力がありますね!!プトレマイオス朝時代に建築された神殿の柱頭は開いた花や蕾を表現しており、一つ一つ異なるデザインになっているのも見どころです。

柱頭は様々なデザイン

柱にはびっしりとレリーフが刻まれていました。

列柱室から見る景色

ライトアップによって陰影が浮かび上がるレリーフ

ライトアップされた時間帯に訪れると、陰影がくっきり浮かび上がったレリーフを楽しめます。

壁画を見るyanakiji

細かいディテールまで観察するなら昼間の方が良さそうですが、この雰囲気もとても素敵でした。

豊穣を示すレリーフか?

天井裏には、上エジプトの守り神であるネクベトの色彩画がしっかりと残っています。2000年以上前の色彩が今でも鮮やかに残っているのは、本当に驚きですね!

天井に描かれたハゲワシ姿のネクベト女神

ただ、一部のレリーフは他の神殿と同様に、一部の過激なコプト教徒によって削り取られた痕跡がありました。これは非キリスト教崇拝を禁止する勅令が出された4世紀頃に行われたもので、異教の神々の姿を消すためだったと考えられています。

神の顔を中心にレリーフが削られていた

ひと味違うコム・オンボ神殿を楽しもう!

今回はコム・オンボ神殿を訪れた感想をお届けしました!

コム・オンボ神殿は、二神に捧げられた珍しい構造、古代の医療技術を示すレリーフ、そして幻想的なライトアップと他の神殿では見られない魅力がたくさん詰まった場所でした。今回私たちは訪れることができませんでしたが、近くにはクロコダイル博物館もあるようです!

ルクソールからアスワンへの移動途中に立ち寄れるので、エジプト旅行の日程に組み込みやすいのもポイント。特に夕方から夜にかけてのライトアップは、昼間とは全く違った表情を見せてくれるので時間が合えばぜひ夜の訪問をおすすめですよ!

闇夜に浮かぶコム・オンボ神殿

ジョジョファンの聖地巡礼としても、古代エジプトの歴史や文化を深く知りたい方にも、きっと満足できる場所だと思います◎

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