見えてきた貧困の影
旅をしていると、時折、貧困の現実に直面する瞬間があります。
今日、キリンディ森林保護区からベコパカへと向かう道中、私たちは2回のイカダ移動を経験しました。1回目のイカダで目にしたのは、大きな声でお金を求める少女の姿。そして、2回目のイカダが手漕ぎだった理由もまた「お金」が関係していました。
揺れるイカダの上で、この地に根付いた「貧困」という現実を深く考えさせられた1日でした。
キリンディでモーニングサファリ
朝7時、昨夜のサファリでガイドをしてくれたアレックスさんとともに、キリンディの森を探検しました。
楽しみにしていたフォッサには残念ながら今日も会えませんでしたが、旅はまだまだ続きます。後のチャンスに賭けたいと思います!
今回のサファリで出会った動物たちについては、以下の記事でまとめています。興味のある方はぜひチェックしてみてください!
圧巻!バオバブの大群
モーニングサファリを満喫した後は身支度を整え、9時ごろにキリンディを出発しました。今日は、合計9時間の長距離移動。最終目的地は「ベコパカ」という街ですが、まずは川を渡るためにフェリー乗り場を目指します。
例のごとく道路はガタガタで、きじーは車の天井に頭をぶつけまくっていましたが、途中でそんな辛い思いも吹き飛ぶような光景に出会いました。それは、視界いっぱいに広がるバオバブの大群!!
キリンディに向かう途中に出会った、あの有名な「バオバブ並木道」よりもさらに壮大なスケールで、数えきれないほどのバオバブが密集していたのです。一つ一つの木は小ぶりながらも、視界いっぱいに広がるその圧倒的な数が生み出す光景は、まさに鳥肌もの。感動で胸がいっぱいになりました。
ガイドのラビさんに「なぜこんなにもバオバブが密集しているの?」と尋ねると、「人が入らない場所だから」と教えてくれました。なるほど。道路を作るときに多くのバオバブが伐採されてしまったのでしょう。人の手が届かない場所だからこそ、この密林が守られてきたのだと実感し、自然の偉大さを改めて感じました。
写真を撮っていると、ゼブ牛を連れた地元の青年たちが静かに横を通り過ぎていきました。その姿は、この地で受け継がれる日常の風景。自然と共存する暮らしの一端を垣間見た気がしました。
ゼブ牛が駆けるたびに土埃が舞います。バオバブの大群を背景にゼブ牛が入る姿は、マダガスカルを象徴するような絵だなと思いました。
倒れたバオバブの木の秘密
先ほどの場所から少し歩いた先に、倒れたバオバブの木がありました。バオバブは豪雨や雷でしばしば倒れることがあるそうで、旅の途中にも何度かその姿を見かけました。
「木が倒れる」というと、幹の形がそのまま残っているイメージがありますが、バオバブはそうではありません。幹が跡形もなくなっていました。
それもそのはず。実際に触ってみてわかったのですが、バオバブの幹は驚くほどふわふわなんです。幹は大量の水分を含んでいるから柔らかいそうで、試しに倒れた木の上に乗ってみると、ぬかるんだように沈み込んでいく感覚がありました…!
バオバブは、他にも驚きの点があります!
事前に情報を調べていたので、バオバブの幹がロープの材料や、家畜の水分補給、餌としても活用されていることは知っていましたが、知識と実際に見て触れるのとでは全然感動が違いました。感動の深さが段違いです!ガイドのラビさんが実際に幹を使って縄を作ってくれましたが、その頑丈さには驚くばかり!!
また、本で「バオバブには年輪がない」と読んでいたのですが、実際に見ると年輪がありました。本の情報が必ずしも正しいわけではないと知り、この瞬間にかつて見たNHKのアニメ『獣の奏者 エリン』のシーンを思い出しました。主人公が「本だけではわからないことがある」と語るあの感動の場面です。本の知識だけでなく、実際に体感することの大切さを改めて感じた瞬間でした。
その後、再び車で走り出すと景色が一変。目の前には信じられないほど赤い大地が広がっていました。マダガスカルでは、これまでも赤土を目にしてきましたが、ここはその中でも特別赤い。鮮やかな赤色の砂が舞いあがり、まるでペンキで草木が赤く塗られたような景色でした。
赤土には鉄分が豊富に含まれているため、この一角にたくさんのキャッサバが植えられていたのも納得です。
イカダに車をのせて川を渡る
フェリー乗り場まで悪路をひたすら進む
赤土エリアを過ぎた後も、容赦のない悪路が待ち受けていました。これは道なのか…!?雨が降ったのか分かりませんが土山がたくさん。。こんな凸凹道を通ってフェリー乗り場まで向かいます。
車の後部座席に乗っているだけなのに、あまりのガタガタ道の衝撃で思わず悲鳴を上げてしまうほどの悪路!まるで誰も通らないケモノ道のようで、「これ、本当に道なの?」と疑いたくなるレベルでした…。
フェリー乗り場に到着
それでもなんとか無事にフェリー乗り場へ到着!!
ガイドのラビさんによると、この乗り場は毎年雨季の影響で場所が変わるそうです。水量の増減で土地の形が変わるため、その都度適切な場所に港を作り直すとのこと。新しい場所は、現地の人でも特定の職業の人だけが知る情報らしく、ガイドさん同士で情報を共有しているんだそうです。
ちなみに、フェリー乗り場は炎天下でめちゃくちゃ暑かったです。あたり一面が砂に覆われているため常にキラキラした砂が空中を舞っており、私たちの体感温度をさらに上げてきます…。
実はこの砂、鉛筆の芯にもなる素材だそうです。
フェリー乗り場の近くには現地の人たちも多くいて、顔に泥のようなものを塗った女性の姿もありました。
マダガスカルの田舎に行くと、泥のようなものを顔に塗っている人を結構見かけるのですが、これは日焼け止め兼美容クリーム。「マスズワン」と呼ばれ、タマリンドの樹皮を削って水に溶かして作るみたいです。
イカダに車を載せて出航
イカダに車を載せる際には、手作り感満載の2本の木板を使います。
もし板からタイヤが外れれば車は川に落ちてしまう、という緊張感たっぷりの作業ですが、現地の人々は慣れた様子で淡々と進めていました。
そんなイカダの仕組みは至ってシンプル。2隻のボートの上に橋をかけるように木の板が敷き詰められていました。車5台分で1セット。
出航前は2セットが連結された状態でしたが、出航後すぐに切り離されそれぞれ別々に川を進みます。
気温は29度…だけど体感気温は35度くらい。ただイカダが走り始めると心地よい風が出てきて、暑さも少し和らぎました。
川を渡っていると、遠い岸の方に、大きな声で叫ぶ女の子の姿が見えました。最初は、歓迎して手を降ってくれてるのかと思っていたのですがなんだか様子が違う。
よくよく見ると、眉間に皺を寄せて必死の形相でこちらを見てました。手はマネーの形。
貧困の現実を突きつけられる瞬間です。遠く離れているため何もできませんが、彼女の魂の叫びは忘れられません。きっと明日も彼女は同じように声を上げ続けるのだと思います。
他にも、川岸では水浴びしている人をたくさん見かけました。若い女性が素っ裸で水浴びをしているのには少し驚きましたが、子どもたちはバク転や小技を披露して楽しませてくれました。
イカダから、現地の方の生活も垣間見え、とても思い出深い体験となりました。
外国人向けレストランで高級ランチ
イカダを降りた後は、車で15分ほどの場所にあるレストランでお昼ご飯を食べました。
お店に入ってすぐに注文したのですが、やはりいつものごとくかなり時間がかかり、最初の前菜のエビのフリットとスープが出てくるまで30分は待ったかな。
野菜スープはとても具だくさんでした。ほんのりパクチーの風味はしますが、パクチーが苦手なやなぎーでも食べれるくらいの優しい味でした。海老のフリットも、衣がカリッとしててとっても美味しい。
ただ、前菜に添えられたパンだけは少し残念でした…。湿ったフランスパンのような食感で正直美味しくなかったです。マダガスカルはお米が主食だからかな…まだ美味しいパンには出会えていません。
メインは、大きな海老を焼いた料理と海老カレーでした!焼き海老は身がプリプリで、噛むたびに海老の旨味が広がっていく。一方の海老カレーはココナッツが効いたあっさり風味で、軽やかな美味しさでした。
ドリンクには、この地方で作られたラム酒にバニラを加えた特製カクテルを選択。バニラの甘い香りがラム酒と絶妙にマッチしてました。
… と全体的に満足でしたが、このお店は外国人観光客向けのようで、2人で10万アリアリ(約3,200円/人)とかなり攻めた価格でした。地元の人が普段5,000アリアリ(約160円)ほどで食事を済ませることを考えるとかなりの値段です。
興味深かったのは、ガイドのラビさんとドライバーのチャールさんも同じ店で食事をしていたこと。ガイドや運転手用の隠れ安いメニューがあるんだそう!気になります。。
▼レストランの場所
ランチが終わった後はすぐに車に戻り、今日も熱い日差しを浴びながらひたすら悪路を進みました。
車の窓がずっと開いているため(開けないと暑くて死ぬから開けているのだけど…)、砂埃が容赦なく車内に吹き込み、私たちの喉を攻撃してきます。
あまりにも暑いので、途中にあった大きな木の下で休憩することに。
ここでは、地元のお母さんたちがいくつかの商品を売っていました。お団子ヘアの方は日焼け止めクリーム兼美容クリームの「マスズワン」を塗っていますね。「毎日塗るわよ」と笑顔で話してくれました!
木陰では子どもたちがダンスをしながら遊んでいました。その無邪気な姿と、木の下に自然と集まる人々の温かい雰囲気にほっこりしました。
精米を体験させてもらう
暑さに耐え、本日2回目のフェリー乗り場に到着!しかし、フェリー乗り場には既にたくさんの人が並んでおり、すぐに出発できそうにありません。
そこで、待ち時間を利用して少し周辺を散策することにしました。
フェリー乗り場のすぐそばでは、現地の人が夕食の準備をしていました。
移動中の車窓からも、この写真と同じように餅をつくような動きをする人を何度か見かけ、一体何をしているんだろう?と気になっていましたが、どうやら精米作業だったようです。
乾燥させた玄米を大きな臼(うす)に入れ、杵(きね)で叩いて糠(ぬか)を取り除く、まさに昔ながらの方法です。精米機が普及した現在の日本では見ない光景ですが、かつては日本でもこのように精米していたようです!ご飯の前に、みんなで力を合わせて精米するのってなんだか素敵。
精米が終わったら、箕(み)ざるに米をうつしていました。
この箕ざる、日本でも昔はどの家庭にも2〜3個はあったと言われています。もみ殻や塵を選別するための農具で、穀物を干したり運んだりする際にも重宝されています。
実際に私たちも精米を体験させてもらいました。慣れない動きに最初は戸惑いましたが、地元の人たちが「うまいうまい!」と褒めてくれました。本当かどうかはさておき(笑)、笑顔で楽しそうに応援してくれる姿が嬉しかったです。
手漕ぎのイカダ!? 原始的に川を渡る
日が暮れ始めても、フェリー乗り場にはまだたくさんの車が並んでいます。川を渡って向こうの岸まで行くだけなのですが、イカダが1台しかない上に手漕ぎなので時間がかかります。
並ぶ車の前で、地元の子どもたちが仲良く座ってました。車の観察をしているのかな?みんな頭の形が綺麗だなあ。
河辺には木でできたマダガスカルの伝統的なカヌー。
そして、川の向こう側には、かっこいい岩壁が広がっていました。現地の人たちにとっては、これが当たり前の風景なんだろうなぁ…。
今回のイカダは手漕ぎで、ゆっくりと時間をかけて進みます。「なんでエンジンを使わないのだろう?」と疑問に思っていたのですが、その理由がとても興味深いものでした。
実は、エンジン付きのフェリーよりも手漕ぎのフェリーを選ぶ方が操縦士の手取りが多くなるため、あえて手漕ぎを選んでいるそうです。
運賃はエンジン付きが20,000アリアリ(約660円)なのに対し、手漕ぎは30,000アリアリ(約990円)。さらに、ここのフェリーの経営者は中国人で、船を漕ぐ人たちはその中国人経営者から給料を受け取りつつ、手漕ぎの場合の余剰分である330円を追加で稼いでいるそうです。この仕組みは、経営者には「エンジン付きで運行している」と見せかけながら、実際には手漕ぎで収入を増やすというものです。
この光景を目の当たりにして、韓国の「パリパリ文化」(効率重視の文化)とは真逆だと感じました。ここマダガスカルでは、効率よりも「今日を生きるための稼ぎ」が優先されている。そんな現実が垣間見えた瞬間でした。
私たちは、日が沈んだ頃にようやくイカダに乗り込むことができました。
イカダはの操縦士は3人。車3台と10人ほどが乗っているのにすごい力です。
でもやっぱりスピードは遅い…。
1回目のイカダとは異なり、日が暮れた後だったため周りの景色はほとんど見えず、さらに蚊の大群が耳元で「ぷーん」という音を立てながら飛び交うという、かなり不快で辛い時間でした。
ベコパカの宿に到着
イカダから降りた後は、再び車でオフロードを進み今夜の宿「Olympe du Bemaraha Hotel」に到着〜!
今夜のご飯も宿のレストランのフルコースでしたが、昼にたくさん食べたのもあって全然食べれませんでした。もう胃が受け付けない…
デザートのバナナフランベは、もうかなりきつかった…。そもそも生の方が好きだから、なんでバナナを焼くんだろうとちょっぴり思っちゃう…泣
部屋のトイレ&シャワールームはこんな感じでした↓
今日も疲れたからぐっすり眠れそう。それでは皆さん、また明日〜
▼追記(旅を終えてから)
私たちがマダガスカルに行ったのは7月後半〜8月前半の乾季です。雨季は1月〜3月で、気候や道路状況がガラリと変わる地域もあります。ぬかるんで通れない道も出るみたいなので、事前に調べていくと良いと思います!
ポッドキャストでは当時の様子をリアルに語っています!よかったらこちらもチェックしてみてくださいね!