私たちのガイドの「ラビさん」は、実はマダガスカルの大統領になりたい男。
初めて会った日から「もし私が大統領になったら〇〇したい」と事あるごとに口にしていました。最初は軽いジョークかと思っていましたが、日に日に熱を帯びる彼の話。
——同じ島国である日本はあんなにも発展しているのに、なぜマダガスカルは貧困から抜け出せないのか?——
旅を共にするうちに、それが本気の夢であることが伝わってきました。
この記事では、小さな村に生まれたラビさんがどうやってエリートへと成長したのか、日本を訪れたときに感じたこと、そして大統領になったら実現したいことについて深掘りします。人物特集ははじめてですが、それだけラビさんは語るべきものを持っている人なんです。ぜひ最後までご覧ください。
ラビさんのプロフィール

名前(名称) | ア ラヴィ(La Vie=フランス語で「生命・人生」) |
年齢・性別 | 56歳・男性 |
職業 | 日本語教師 兼 ガイド |
出身 | マダガスカルの小さな村 |
普段は「ラビさん」と呼んでいますが、本来の名前は「ア ラヴィさん」です。
とはいえ、これはガイドをする時の通称としてつけたフランス名で、本名はまた別にあります。通称については、以下の記事で簡単にまとめていますので興味のある方はご覧ください。
小さな村からエリートへ
マダガスカルで日本語を教える教師であり、ガイド歴30年のベテランでもあるラビさん。確実にエリートと言える彼ですが、実は小さな村の出身です。
農家の家に生まれた6人兄弟の末っ子。末っ子なら上の兄弟たちから勉強を教えてもらえたのでは?と思いきや、「それはない」ときっぱり否定しました。「じゃあ、村で神童だったんですか?」と聞くと、モジモジと恥ずかしそうにしながらも、「はい」と控えめな笑顔で認めるラビさん。その様子が可愛くて面白くて、後日ノリで同じ質問をすると、今度はキラッとした笑顔で「うん!」と元気よく答えてくれました(笑)

兄弟の話に戻すと、実はお兄さんとお姉さんは医者で、結局みんな優秀なようです。ただ、ラビさんはこう考えています。「世界のことを一番知っているのは自分だからこそ、大統領になるべきだ」と。
ラビさんの人生を変えたきっかけ
決して裕福ではない農家の家庭に生まれながら、どうして彼はエリートの道を歩むことができたのか。その答えは、教育熱心な両親が与えてくれた「外の世界を知る機会」にあります。
マダガスカルの多くの子どもが、若いうちに村を出ることは難しく、狭い世界の中で育っていきます。しかし、ラビさんの両親は、彼に都会と村を行き来する機会を与えてくれたのです。その経験が彼にとって衝撃的だったことは想像に難くありません。

私たちの旅の中でも何度も話題にしていますが、マダガスカルの村はまるで別世界。日本の田舎ですら都会に思えるほど、原始的な暮らしが今も続いています。その環境を抜け出し、広い世界を見た経験が、ラビさんの好奇心を大きく育てているのだと思います。
日本への訪問と高まる関心
3度の訪日経験
日本語教師であるラビさんは、なんと、これまでに3回も日本を訪れています。そのうち2回は研修のための招待で、費用は全額負担だったそうです。2006年と2014年には、それぞれ2カ月間の研修に参加し、2023年には大阪に滞在しました。

はじめて成田空港に降りたった際には「なんて綺麗な街なんだ!!」と感動したと言います。同時に、第二次世界大戦後はマダガスカルと日本は同じ経済力だったはずなのに、どうしてこんなに差が開いたのか?という疑問も抱いたそうです。
ここでプチ豆知識!
マダガスカルは日本の約1.6倍の面積を持つ島国。同じ「島国」という共通点があるからこそ、ラビさんに限らず、多くのマダガスカル人が日本と自国を比較しがちなのだそうです。
日本を訪れた時の感想

ラビさんがまず驚いたのは、日本のビルの高さと、道ゆく人々の綺麗な装い、そして真面目そうに見える雰囲気でした。それに、日本の食事も美味しいと!!回転寿司では、人生で初めて生魚を食べたそうです。また、納豆も意外といけたのだとか。

その一方で、どうしても受け入れられなかったのが「酢昆布」と「ふどうふ」。特に、ふどうふにはかなり苦戦したようで、「吐いたけど、一部は飲み込んで泣いてしまった」とも語っていました。
そして、何よりも印象的だったのは、日本滞在中の自由時間の過ごし方。
2ヶ月も滞在しているので、行こうと思えばどこへでも行けたはずなのに「近くのジャスコに行っていた」と言います。自由に使えるお金が限られていたという理由もあるようですが、それでも1日中いても足りないくらい楽しかったと満喫した様子でした。
さらに、スーパーのお弁当やお惣菜が夕方になると割引されることを知り、毎回夕方以降に買い物するようにしていたそうです。滞在中にしっかりと日本の習慣を取り入れているあたり、さすがラビさんです。

ラビさんが大統領になったらやりたいこと
「大統領になりたい」と語るラビさんに、実現したいことを聞いてみました。
真っ先に挙げたのはインフラの整備。道路をしっかり整備し、水道や電気を安定して使えるようにすることが最優先だそうです。
インフラ整備の必要性
これまでの旅レポでも何度も伝えてきましたが、マダガスカルの道路は驚くほど悪路が多く、「え、ここ車で通るの!?」と驚くこともしばしば。高齢者の移動はまず難しく、若くて体力のある人でも一苦労です。

また、水道や電気の問題については、ガイドとしての視点からも強く感じているようです。
「せっかくマダガスカルに来て、高いホテルに泊まってくれても、その街のインフラが整っていないと、お湯もちゃんと出ないし、計画停電も起こる。申し訳ない気持ちになる。」とのこと。
観光業を発展させたくても、基盤となるインフラが整っていなければ、マダガスカルの魅力を十分に伝えることはできません。どんなに高級なホテルでも、お湯が出なかったり、頻繁に停電が起こったりすると、台無しになってしまいますもんね。
お米問題の解決
さらに、ラビさんは「お米の問題」にも取り組みたいと話していました。
マダガスカルでは、主に赤米が食べられていますが、実はその多くを輸入に頼っているとのこと。あちこちで田んぼを見かけるので、これはかなり意外な問題点でした。
まあ、マダガスカルの人々はとにかくお米が大好きで、「お米を食べないと眠れない」とまで言われるほど!お皿に山盛りで出てくることが当たり前なので、国内生産だけでは到底追いつかないのかもしれませんね。

もしラビさんが大統領になれば、こうしたインフラや食糧問題に取り組み、マダガスカルの未来をより明るいものにしてくれるかもしれません!今のところ、ラビさんとは5年後に大統領になることを約束しました。約束した日からラビさんの写真のお決まりポーズは、パーにした右手を高々と掲げるスタイルに!彼の夢がどこまで実現するのか、これからのマダガスカルが楽しみです。

まとめ
ラビさんは、日本に強い関心を持ち、学び続ける姿勢を持つ、マダガスカルを変えたいと本気で考える人物です。「大統領になりたい」という彼の夢は、単なる願望ではなく、現実的な課題意識から生まれたもの。そんな彼の話を聞いていると、思わず応援したくなってしまいますよね。
ラビさん、日本にまた遊びにきてね〜!いろんなところを案内したいと思います。