カルナック神殿は、約2000年にわたり歴代のファラオたちが次々と増築・拡張を重ねてきた古代エジプト最大の神殿複合体です!神殿の中でも圧巻なのが、巨大な石柱が並ぶ大列柱室と、高くそびえるオベリスク。当時の建築技術・芸術の高さに思わず息をのんでしまいます。
この記事では、実際にカルナック神殿を訪れた感想を基本情報とともにお届けします!
カルナック神殿とは?
カルナック神殿とは、古都・テーベ(現ルクソール)にある古代エジプト最大の神殿です。古代エジプト語で「イペト・イセト」、すなわち「最も選ばれし場所」と呼ばれてきたこの地は古代エジプト人にとって特別な場所でした。

神殿の主祭神は、太陽神ラーと創造神アメンが融合した最高神「アメン・ラー」。
新王国時代にテーベがエジプトの首都になると、アメン・ラー信仰は国教となり、カルナック神殿は国家最高の宗教的権威を象徴する場所となります。
2000年もの間、増改築が繰り返された
「イペト・イセト」と言われるように、歴代のファラオたちにとっても特別な場所。古い記録では、インテフ2世の治世(紀元前2112年~紀元前2063年頃)からプトレマイオス朝時代(紀元前305年~紀元前30年)までのおよそ2000年もの間、何度も何度もファラオによって増改築が重ねられてきました。アメン・ラー信仰が国教となった新王国時代に統治したファラオのほぼ全ては、この地に足跡を残したと言われています。
2つの神殿を結ぶ神聖な通路
古代エジプト神殿の多くは、太陽神の天空の軌跡を反映するために、東西軸に沿って建てられてきました。カルナック神殿の中心であるアメン大神殿もそのように造られています。
ただし、この神殿には特別な工夫がもう一つあります。それが、ルクソール神殿へとつながる南北軸の配置です。かつては、カルナック神殿とルクソール神殿は約3kmにわたるスフィンクスの参道で結ばれていました。年に一度の「オペト祭」の時には、王から神への供物が神輿に載せられ、ルクソール神殿を目指してこの参道を練り歩いたのだそう。つまり、この参道は王が神に祈りを捧げるための神聖な通路だったのです。
この参道は長らく砂に埋もれていましたが、70年を超える修復工事が終了し、2021年から一般公開されています。ルクソール神殿まで実際に歩くことができますよ◎
※ルクソール神殿については、別の記事で詳しくまとめます!
古代エジプトの宗教的中心地
カルナック神殿と一口に言っても、実際には単一の神殿ではありません。100ヘクタールにも及ぶ広大なエリアに、大小さまざまな神殿、礼拝堂、オベリスク、聖なる池が点在する巨大な神殿複合体。

多くの人々が集まり、年間を通じて祭祀や宗教行事が催されました。中でも前述した「オペト祭」は最大の行事だったようです。
営業時間と入場料
2025年10月時点の営業時間と入場料金は以下の通りです。
営業時間:午前6:00〜午後5:00(年中無休)
入場料金:▽カルナック神殿&オープンミュージアム
大人600エジプトポンド、学生300エジプトポンド
▽カルナックのムト神殿
大人200エジプトポンド、学生100エジプトポンド
実際に訪れる際は、以下のエジプト観光・考古省のWebサイトから最新情報をご確認ください↓
https://egymonuments.gov.eg/en/archaeological-sites/karnak
古代エジプト最大の聖域に足を踏み入れて
カルナック神殿の前に訪れた「ハトシェプスト女王葬祭殿」からは、車でおよそ20分ほどの距離でした。

駐車場に車を停めて、入り口に向かいます。


チケットは事前にWEBで購入済み。QRコートをかざして入場ゲートを通過すると、まずはじめに通るのがスフィンクス参道です。
スフィンクスの参道
かつては、3km離れたルクソール神殿まで伸びていたスフィンクス参道。

羊頭のスフィンクスの顎の下にはファラオの像が刻まれています。たくさん並んでいますが、それぞれに個性があって面白い!!

スフィンクスといえば、ライオンの体に人間の頭をもつイメージが強いですが、この神殿のスフィンクスが羊なのは、主祭神である「アメン・ラー」の聖獣が羊だったからです。

スフィンクスの参道を抜けてカルナック神殿の内部へ。大きな塔門をくぐります。

ここまで「大きい、広い、古代エジプト最大の神殿」といった表現を使ってきましたが、実際に目にするとその大きさに驚かずにはいられません。ここはもはや神殿というより、古代の都市そのものだと感じてしまうほど。
大列柱室

カルナック神殿の最大の見どころはこの大列柱室です!その名の通り、巨大な石柱がボンボンと立ち並ぶ空間。これがもう圧巻の光景で、タイムスリップして古代エジプトに入り込んだような、そんな世界観を体験できます。

石柱は全部で134本。中心の12本はそれぞれ高さ21m、それ以外の122本はそれぞれ高さが約15mです。柱にはレリーフが刻まれており、古代エジプトの建築技術と芸術の高さに惚れ惚れしてしまうほど。

ちなみに、中心の12本の柱は「開花式パピルス柱」と呼ばれ、光を取り込みやすい構造になっています。一方の124本の柱は「閉花式パピルス柱」と言い、光が入り込みにくい構造をしています。パピルス草の開花した姿と閉じた姿をモチーフに、光の演出まで計算された設計には、古代エジプト人の美意識の高さが伝わってきますね…!!

オベリスク
大列柱室を抜けると、2本のオベリスクが視界に飛び込んできます。

オベリスクは先端が尖った巨大鉛筆のような形をした塔で、記念碑的な役割をしています。かつてはこの場所に20基以上のオベリスクが立っていたと言われていますが、現在に残るのはトトメス1世のオベリスクが1基、そしてハトシェプスト女王のオベリスクが倒れた分も含めて2基のみです。

大きい方が高さ30m、重さは300トンを超えるハトシェプスト女王のオベリスク。女王の名前や工数、功績を記した碑文が描かれており、見応えがあります。


また、前回の記事「古代エジプトの美しき女王!ハトシェプスト女王葬祭殿の魅力と見どころ」でハトシェプスト女王の像や名前が描かれた碑文の多くは、彼女の死後に政治的背景からトトメス3世の手によって消されてしまったとお伝えしましたが、その痕跡はここカルナック神殿でも見ることができます。
注目すべきは、オベリスクの下側に積み上げられた石垣。かつてはもっと高く積み上げられていました。これはトトメス3世がハトシェプスト女王の存在を隠すために、オベリスクを覆い隠していた名残なのです。


壊すのではなく隠すという行為に、トトメス3世のハトシェプスト女王への複雑な想いが感じられます。そして現代の私たちにとっては、彼がこれを隠してくれたおかげで、今もなお美しく保存されたオベリスクを見ることができるのです。
2000年の歴史を感じられる素晴らしいスポット
今回はカルナック神殿の基本情報と訪れた感想をお届けしましたが、いかがでしたか?
yanakiji旅ではこれまで数々の遺跡を訪れてきました。特にマチュピチュで見たインカ帝国の“剃刀の刃も通さない”と言われる石積みの技術には驚かされましたが、インカよりもはるか昔に栄えた古代エジプトの遺跡は、装飾の美しさと壮大さが際立っていてまた別の感動があります。
※インカの技術は以下の記事からご確認いただけます↓
世界遺産クスコの街歩き!超絶精巧なクスコ大聖堂や太陽の神殿に身震い
さらに印象的なのは、インカ帝国の遺跡がスペインによる征服で多く失われたのに対し、古代エジプトでは数千年の時を経た今も数多くの建造物や遺物が残っているということ。その保存状態の良さにも驚かされました。
古代エジプト最大の神殿として、約2000年にわたりファラオたちが手を加えてきたカルナック神殿。その壮大な歴史に思いをはせながら、古代の栄華を感じられる貴重な時間となりました。この記事に関連するポッドキャストはこちらから↓