極寒を生き抜くホッキョクギツネ(Arctic Fox)の生態を学ぶ

極寒を生き抜くホッキョクギツネ(Arctic Fox)の生態を学ぶ

今日のテーマは「ホッキョクギツネ(Arctic Fox)」

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今回は、白くフワフワな姿が魅力のホッキョクギツネ(Arctic Fox)の生態をお届けします!ホッキョクギツネは-70℃にもなるような極寒の世界で生きています。小さな体で、一体どのようにして生き抜いているのでしょうか?「ユーコン(Yukon)にはどんな動物がいる?北米での呼び名とともにご紹介!」の記事でもホッキョクギツネについて簡単に触れましたが、今回はさらに詳しくお伝えしたいと思います。

ホッキョクギツネ(Arctic Fox)の基本情報

種属哺乳網 食肉目(ネコ目) イヌ科
体長45〜67cm (平均55cm程度)
体重1.4〜9kg(平均4kg程度)
生息地北極圏周辺のツンドラ地帯
呼び名ホッキョクギツネ、シロキツネなど

David MarkによるPixabayからの画像

David MarkによるPixabayからの画像
種属哺乳網 食肉目(ネコ目) イヌ科
体長45〜67cm (平均55cm程度)
体重1.4〜9kg(平均4kg程度)
生息地北極圏周辺のツンドラ地帯
呼び名ホッキョクギツネ、シロキツネなど

ホッキョクギツネ(Arctic Fox)はその名の通り、北極地域に生息する小型のキツネです。
体長は55cm前後で、犬で言うとボーダーコリーや紀州犬と同じような大きさです。ボーダーコリーの体重は15〜20kg、紀州犬は20〜30kgです。一方のホッキョクギツネの体重は4kg程度、大きな個体でも10kg未満なので非常に軽いことが分かります。極寒地域の猛吹雪で飛ばされてしまわないか少し心配になってしまいます…。

種属の分類についてプチ解説

前述の表から、ホッキョクギツネは「イヌ科」なのになぜ「ネコ目」なの?と思われた方もいるのではないでしょうか。その理由について解説します。

まずは、分類の基準を順にみていきましょう。
「哺乳網」は、子を乳で育てる生き物のことを指します。「食肉目(ネコ目)」は哺乳網の中でも、肉を食べる生き物のことを指します。食肉目(ネコ目)はさらに細かく分類され、ホッキョクギツネを含むイヌ科に加えて、ネコ科、イタチ科、クマ科などさまざまな種類が存在します。

今ではイヌ科、ネコ科と細かく分類されるようになりましたが、もともとはミアキス(Miacis)という動物を同じ祖先としています。

Photo by フィンク–ミアシスの復元(2008) / Adapted.

ミアキスはかつて森林の木の上で暮らしていましたが、個体数が増えるにつれ生存競争が起こり、生息地が分かれました。森林から草原に移動したミアキスがイヌの祖先となり、森林に残ったミアキスがネコの祖先になったのです。

そして、食肉目が「ネコ目」と言われる理由ですが、文部省(今の文部科学省)が「学術用語集動物学編」を作成する際に、分かりやすくするため食肉目の中の代表種を、分類名に用いたことに起因します。森林に残ったミアキスの進化である「ネコ」が代表種として選ばれたのです。このように、ホッキョクギツネが「イヌ科」なのに「ネコ目」と呼ばれるのには、分類上の便宜的な理由があります。

極寒を乗り切るホッキョクギツネ(Arctic Fox)の体の仕組み

その1.夏と冬で変わる毛の色

ホッキョクギツネはイヌ科の中で唯一、季節に応じて衣替えをする動物です。

これには「狩りの際に自分の体をカモフラージュする」という大切な理由が隠されています。北極圏の冬は一面が雪に覆われ白銀の世界となりますが、そんな環境下でも獲物にバレず狩りができるよう、毛を白色に変えるのです。個体によっては、グレーがかった青色になるものもいます。

UnsplashJonatan Pieが撮影した写真

一方、夏が訪れると、剥き出しの岩や植物に身を隠すことができるよう、毛の色を茶色に変えます。

Markus FischerによるPixabayからの画像

その2.寒さに強い毛皮

ホッキョクギツネは、北極圏に生息する動物の中で、最も暖かい毛皮に覆われていると言われます。-70℃を下回ると少し寒がる様子を見せるものの、-80℃でも問題なく生きることができます。-80℃の世界なんて全く想像ができません…!

寒さに強い理由は、密集した毛と体にたっぷり溜め込んだ脂肪にあります。フワフワで丸々とした姿は、しっかりと体を守るためなのですね。

358611によるPixabayからの画像

冬になると毛が伸び、耳や口先、さらには足裏まで覆うようになります。肉球が毛で覆われるため、氷の上でも滑らずに歩くことができます。

また、ホッキョクギツネはフサフサのしっぽを防寒具として使ったり、巣穴をシェルターにして猛吹雪を凌いだりと、寒さから身を守るためにアイデアを駆使します。サバイバルの達人です!

その3.凍らない肉球

ホッキョクギツネの肉球には、氷点下の中でも凍らない仕組み「体向流熱交換システム」が備わっています。この仕組みは、肉球内の静脈と動脈の関係にあります。静脈の血液が地面や外気によって冷えても、心臓から運ばれてくる動脈の暖かい血液によって、冷えを相殺し体温を一定に保つことができるのです。

この凍らない肉球の秘密は、他のイヌ科の肉球や、ペンギンの足やくちばし、イルカのヒレにもあると言われています。

その4.熱を逃さない小さな耳

キツネというと、ピンと伸びた大きな耳を想像する方も多いのではないでしょうか。しかし、ホッキョクギツネは小さな可愛い耳が特徴的です。まるでポメラニアンみたいですよね?

UnsplashJonatan Pieが撮影した写真

この小さな耳にも、極寒を乗り切る秘密が隠されています。耳には、体の熱を外に逃すという役割があるのですが、ホッキョクギツネは体の熱が外に逃げてしまわないよう小さな耳をしています。

逆に、暑い地域に住んでいるフェネックギツネ(Fennec Fox)は大きな耳を持ち、熱を体に溜め込まないように出来ています。

▽フェネックギツネ

フェネックギツネ
RethinktwiceによるPixabayからの画像

ホッキョクギツネ(Arctic Fox)は一夫一婦制!

野生のホッキョクギツネは、一生涯を同じパートナーと過ごす「一夫一婦制」の動物で、通常は1カップルごとに生活をします。日本の核家族のようなイメージです。

Sarah McFaddenによるPixabayからの画像

繁殖期は4月〜7月、妊娠期間は49〜57日ほど(平均52日)と言われており、1回の出産で2〜15匹(平均7匹)の子どもを産みます。産む子どもの数には個体差がありますね。

子育ては、メスとオスの2匹で力を合わせます。子どもたちは生後1ヶ月ほどで離乳し、肉を食べ始めます。そして、夏になると子どもたちは独り立ちし、別々に暮らすようになります。

ホッキョクギツネ(Arctic Fox)の食事事情

ホッキョクギツネが生息する地域は冬になると雪に覆われ、食べ物を見つけるのが困難になります。そのため、食べ物が豊富な夏の間に獲物を捕まえ、巣穴や岩の下、岩の割れ目に隠し、厳しい冬に備える習性があります。

David MarkによるPixabayからの画像

また、ホッキョクギツネは基本的に何でも食べてしまいます。肉食の性質が強いことから、主に小型の哺乳類(レミングやツンドラハタネズミ、ホッキョクウサギなど)や鳥類(ウミスズメやライチョウなど)、魚を食べますが、時には果実も口にします。さらには、他の動物が食べ残したセイウチやクジラ、トナカイなどの死肉も食べることもあるのだそう。まるでハイエナのようですね…!

このような特徴から、ホッキョクギツネは「北極圏の掃除屋」と呼ばれることもあります。北アラスカでは、人間のゴミ置き場を漁りに来ることも日常茶飯事のようです。

まとめ

今回は、ホッキョクギツネの生態をお届けしました。キュートな見た目でありながら、ハイエナのようになんでも食べてしまうことには驚きでしたね。やはり極寒を生き抜くだけあって逞しいです。極寒カナダ旅では、ホッキョクギツネにも会えると良いなあ…。

※追記:2023年2月に極寒カナダ旅に行ってきました!残念ながらホッキョクギツネに会うことは出来ませんでしたが、もしよかったらその時の旅レポも見てみてください!旅レポはこちらから。

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